

「過去に作った横型の動画が10本あるのですが、そのまま使えますか」「縦にしたら文字が見切れて、作り直しになりました」――縦型動画のご相談は、この2つが入口になります。
結論からお伝えすると、横型を縦に切る作業は、多くの場合で作り直しより高くつきます。縦型は画面の使い方そのものが違うため、切り取っただけでは成立しません。最初から縦で撮るほうが速く、質も上がります。
solezoreでは、縦型と横型の関係を、家具の配置にたとえて説明しています。広い部屋のレイアウトを、そのまま細長い部屋に置き換えることはできません。通路の取り方から考え直すことになります。
この記事では、9:16の仕様とセーフエリア、縦で撮る前提の構図、横型素材の扱い、面ごとの違い、制作を外注する場合の費用までを、実際に制作している立場から解説します。
縦型動画が標準になった理由
結論: 縦型が標準なのは、端末の持ち方に合っているためです。横に持ち替える一手間が入ると、そこで見られなくなります。
まず、なぜこの形なのかを整理します。
持ち替えが起きない
スマートフォンは縦に持って操作します。流れてくる動画を見るときも、そのままの向きです。
横型の動画が流れてくると、画面の中央に小さく表示されます。上下に大きな余白ができ、内容が半分以下の面積になります。ここで指が動きます。
横に持ち替えれば大きく見られますが、その動作が入る動画はほとんどありません。流し見の場では、持ち替えを求めた時点で終わります。
画面全体を使える
縦型は画面のすべてを使えます。同じ被写体でも、顔が大きく映り、文字も大きく置けます。
画面の面積が2倍以上変わるため、伝わる情報量が違います。小さい画面で見られる前提では、この差が直接影響します。
一方で、縦型は横方向の情報が入りません。広い風景や、複数人が横に並ぶ構図は苦手です。ここは構図で解決します。
広告の面もほぼ縦型
投稿だけでなく、広告として配信される面も縦型が中心です。ストーリーズ、リール、ショートのいずれも縦型が標準です。
横型で作った素材は、広告に転用するときも作り直しになります。将来的に広告に出す可能性があるなら、最初から縦で作っておくほうが無駄がありません。
横型が必要なのは、企業サイトへの掲載や、展示会での再生など、画面が横に固定されている場面に限られます。
9:16の仕様|解像度とセーフエリア
結論: 解像度は1080×1920が基本です。加えて、上下に表示が重なる範囲があるため、そこを空けて構図を作ります。
数値を先に押さえます。
基本の数値・上下のセーフエリア
| 項目 | 推奨 | 補足 |
|---|---|---|
| 縦横比 | 9:16 | 面をまたいで共通 |
| 解像度 | 1080×1920 | これ以上は容量が増えるだけ |
| フレームレート | 30fps | 動きが速い場合は60fps |
| 尺 | 30〜90秒 | 面によって上限が異なる |
解像度を上げても、表示される品質はほとんど変わりません。容量が大きいとアップロードに時間がかかるため、1080×1920で足ります。
画面の上下には、面の表示が重なります。上部にはアカウント名や戻るボタン、下部にはキャプションやボタンが載ります。
上下それぞれ画面の15%程度を空けます。ここに文字や重要な被写体を置くと、隠れて見えません。
一覧で正方形に切り取られる面もあるため、最も重要な文字は中央3分の1に収めます。この範囲であれば、どの面でも切られません。
書き出しの設定
編集アプリの書き出し設定で、縦横比が9:16になっているかを確認します。ここが違うと、自動で余白が足されます。
透かしが入る設定になっていないかも確認します。他社のロゴが入った動画は、表示が伸びにくくなります。無料の範囲で使っている場合、書き出し時に入ることがあります。
音は速度変更の後に入れます。書き出してから音がずれていることに気づくと、やり直しになります。

撮影|縦で撮る前提の構図
結論: 縦型は横に広がる情報が入らないため、画面に置く主役を1つに絞り、そこに寄る構図が基本になります。横型の発想のまま撮ると、被写体が小さくなります。
構図の作り方を変えます。
主役を1つに絞る・縦の情報を使う
横型では複数の要素を並べられますが、縦型では入りません。画面に置くのは1つだけにします。
人が話す動画なら、顔が画面の3分の1を占めるまで寄ります。引いた画は背景に視線が散り、話している人に目が行きません。
商品を映す場合も、全体を映すより使っている手元に寄ります。全体は1カットだけあれば足ります。
縦型は、上下の関係を見せることに向いています。積み重なるもの、上から下への流れ、高さのあるもの。
たとえば、手順を上から順に見せる、素材を重ねていく、といった構図は縦型のほうが伝わります。横型の発想のまま撮ると、この特性を使わないまま終わります。
人と商品を同時に映す場合も、横に並べるのではなく、上下に配置します。
文字の置き場所を空けて撮る
編集でテロップを載せることを前提に、その分の余白を空けて撮ります。顔を画面の中央に置くと、文字を置く場所がなくなります。
顔をやや上に、文字を下に置く配置が最も扱いやすい形です。撮影の段階でこれを意識していないと、編集で文字が顔に重なります。
複数のアングルを撮る場合も、同じ配置で統一します。カットが切り替わるたびに文字の位置が動くと、読みにくくなります。
横型素材を縦に変換する
結論: 単純に中央を切り抜くと、必要な部分が入りません。上下に余白を作るか、部分ごとに切り出すかの2つの方法があります。
既存の素材がある場合の対処です。
中央を切り抜く場合
被写体が中央に大きく映っている素材であれば、切り抜きで成立します。人が1人で話しているインタビューなどが該当します。
一方で、複数人が並ぶ構図、広い風景、字幕が横一杯に入っている素材は切れません。横型の素材のうち、そのまま使えるのは3割程度という感覚です。
判断は素材ごとに行います。まとめて変換する処理は、失敗した素材が混ざったまま公開されることになります。
上下に余白を作る場合
映像を横幅に合わせて縮小し、上下に余白を作る方法があります。この場合、映像は画面の中央に小さく表示されます。
余白に文字や背景を置いて埋めます。ただし、映像そのものが小さくなるため、内容が伝わりにくくなります。
この方法が成立するのは、映像より文字で伝える動画です。数字や比較を示す内容であれば、余白を使った構成でも問題ありません。
部分ごとに切り出して組み直す
1本の横型素材から、必要な場面だけを縦に切り出して並べ直す方法もあります。元の順番にこだわらず、使える部分だけを拾います。
作業としては、素材を見ながら使える箇所に印を付け、そこだけを切り抜いて並べます。60分の素材から、縦型で使える箇所を集めると3〜5分になるというのが実際の歩留まりです。
この方法は、講演やインタビューを撮った素材で成立します。話している人が中央に映り続けているため、切り抜きが機能します。逆に、資料を映しながら進む形式の素材は、文字が横に広がっているため使えません。
作業時間は素材60分あたり2〜3時間です。外注する場合は1本5,000〜1万円が目安になりますが、元素材の質によって成立する本数が変わるため、まず1本試してから本数を決めます。
面ごとの仕様の違い
結論: 縦横比と解像度は共通ですが、尺と表示の重なり方が違います。同じ書き出しで3つの面に出せます。
差分だけを押さえます。
尺と表示の違い・1本の書き出しで3面に出す
| 面 | 尺 | 表示の重なり |
|---|---|---|
| TikTok | 3分以上まで対応 | 右側にボタン。下部にキャプション |
| Instagramリール | 90秒程度 | 右側にボタン。下部にキャプション |
| YouTubeショート | 60秒以内 | 下部にタイトルとボタン |
右側にも表示が重なるため、右端の15%にも文字を置きません。左寄せか中央寄せで配置します。
縦横比と解像度が共通なので、書き出しは1回で足ります。差し替えるのは音源と冒頭の言い方です。
尺だけは注意が必要です。60秒を超える動画は、YouTubeショートには出せません。3面に出す前提なら、60秒以内で作ります。
編集の段階で60秒版と90秒版を作る方法もありますが、作業が倍になります。最初から60秒に収めるほうが現実的です。
縦型動画の制作を外注する
結論: 縦型に特化した制作を頼む場合、横型の制作会社より単価が下がる傾向があります。撮影の規模が小さいためです。
外注する場合の目安です。
費用の内訳・依頼先を選ぶときの確認
| 依頼の範囲 | 費用 | 補足 |
|---|---|---|
| 編集のみ(カットと字幕) | 1本3,000〜5,000円 | 素材は自社で撮影 |
| 編集のみ(演出あり) | 1本8,000〜1万5,000円 | 効果音・図の作成を含む |
| 撮影+編集 | 1本2万〜5万円 | 撮影スタッフが出る |
| 撮影1日のパッケージ | 15万〜30万円 | 8〜12本を1日で撮る |
| 横型からの変換のみ | 1本5,000〜1万円 | 素材によって成立しない場合がある |
撮影を1日にまとめると、1本あたり1万5,000〜3万円まで下がります。月に何回撮影日を取れるかが、単価を決めます。
確認するのは3つです。
- 縦型の制作実績があるか(横型中心の会社は構図の作り方が違う)
- 素材の権利が自社に残るか
- 修正の回数(3回目以降は1回5,000円前後の追加が一般的)
1番目が最も差になります。横型の映像制作を長く手がけてきた会社は、引いた構図で綺麗に撮る技術を持っていますが、縦型では逆に働きます。
既存の資産を縦型に作り替える
結論: 過去の横型素材は、変換するより台本として使うほうが価値が出ます。内容は残し、撮り方だけ変えます。
資産の使い方を変えます。
内容だけを引き継ぐ
過去の動画で反応が良かったものは、内容が確認済みの材料です。同じ内容を縦型で撮り直します。
変換に1本1万円かけるより、撮り直しのほうが結果が良くなる場合が多くあります。撮影日にまとめれば、1本あたり1万5,000〜3万円です。
差し込み用のカットとして、横型素材の一部を使う方法もあります。全編は成立しなくても、数秒であれば違和感が出ません。
使えるものと使えないものを分ける
素材を全部見直すと時間がかかります。次の基準で分けます。
- 人が1人で中央に映っている:切り抜きで使える
- 商品が中央に大きく映っている:切り抜きで使える
- 複数人が横に並ぶ:使えない
- 横一杯の字幕が入っている:使えない
- 広い風景:使えない
この作業は素材1本あたり1分で終わります。まとめて変換する前に、必ず分けます。
つまずきやすい点
結論: 失敗は、書き出しの設定と文字の配置に集中します。公開前に確認すれば避けられます。
確認の工程を入れます。
公開前に実機で見る・書き出しの設定を毎回確認する
編集アプリの画面と、実際に投稿された画面では見え方が違います。上下と右側に表示が重なるためです。
下書きの状態で一度投稿し、自分の端末で確認します。ここで文字が隠れていれば、公開前に直せます。
複数の面に出す場合は、それぞれで確認します。重なる位置が面によって違うためです。
縦横比、解像度、透かしの有無の3つを確認します。編集アプリの更新で設定が戻ることがあります。
透かしが入ったまま公開すると、表示が伸びにくくなります。1本ごとの損失は小さくても、続けると差になります。
社内で複数人が編集する場合は、設定を書いたものを共有します。人によって違う状態にしません。
solezoreの支援事例|業種別の進め方
結論: 縦型への切り替えは、素材の変換ではなく撮り方の変更として進めます。変換で済ませた企業は、後から作り直しています。
2つの事例を挙げます。
日用品・家電|変換をやめて撮り直しに切り替えた
日用品を扱うメーカーから、過去の横型素材20本を縦型に変換したいというご相談でした。展示会や企業サイト向けに作ったものです。
素材を1本ずつ確認したところ、切り抜きで成立するのは6本でした。複数人が並ぶ構図と、横一杯の字幕が入った素材が大半を占めていました。
6本は変換し、残りは内容だけを引き継いで撮り直しています。撮影日を2回設定し、1日8本で16本を撮りました。変換に14万円かかる見積もりだったものが、撮り直しで24万円。1本あたりでは変換の1万円に対し1万5,000円で、質は大きく変わりました。
メディア|文字の配置を統一した
情報を扱うメディア企業から、動画によって文字が読みにくいものがあるというご相談をいただきました。
確認したところ、顔の位置が動画ごとに違い、文字が顔に重なっているものが半数近くありました。撮影の段階で配置を決めていない状態です。
顔をやや上、文字を下という配置に統一し、撮影時に画面の目安線を表示する運用にしました。最後まで見られた割合が26%から34%に上がり、修正の往復もなくなっています。

よくある質問
Q. 横型で撮った動画をそのまま投稿してもいいですか?
A. 投稿はできますが、画面の中央に小さく表示され、上下に大きな余白ができます。流し見の場では、この時点で指が動きます。横に持ち替えてもらえる前提では作れません。既存の素材がある場合は、切り抜きで成立するかを1本ずつ確認してください。
Q. 解像度はどのくらいが適切ですか?
A. 1080×1920で足ります。これ以上に上げても、表示される品質はほとんど変わりません。容量が大きいとアップロードに時間がかかるだけです。フレームレートは30fpsで、動きが速い内容の場合だけ60fpsにしてください。
Q. 文字が隠れてしまうのはなぜですか?
A. 画面の上下と右側に、面の表示が重なるためです。上下それぞれ15%、右端15%を空けてください。加えて、一覧で正方形に切り取られる面があるため、最も重要な文字は中央3分の1に収めます。公開前に下書きで投稿し、実機で確認するのが確実です。
Q. 横型素材の変換はどのくらい費用がかかりますか?
A. 1本5,000〜1万円が目安です。ただし、切り抜きで成立する素材は3割程度です。複数人が並ぶ構図、横一杯の字幕、広い風景は使えません。成立しない素材は、内容だけを引き継いで撮り直したほうが結果が良くなります。
Q. 3つの面で同じ動画を使えますか?
A. 縦横比と解像度は共通なので、書き出しは1回で足ります。差し替えるのは音源と冒頭の言い方です。尺だけ注意してください。YouTubeショートは60秒以内なので、3面に出す前提なら60秒以内で作ってください。
Q. 縦型の制作を頼む会社はどう選べばいいですか?
A. 縦型の制作実績があるかを最初に確認してください。横型の映像制作を長く手がけてきた会社は、引いた構図で綺麗に撮る技術を持っていますが、縦型では逆に働きます。あわせて、素材の権利が自社に残るか、修正が何回まで含まれるかも確認してください。
まとめ
縦型動画について、要点を整理します。
- 縦型が標準なのは、端末の持ち方に合っているため。持ち替えは起きない
- 横型は画面の中央に小さく表示され、面積が半分以下になる
- 解像度は1080×1920で足りる。上げても表示品質は変わらない
- 上下15%・右端15%を空ける。重要な文字は中央3分の1に収める
- 縦型は主役を1つに絞る。顔は画面の3分の1を占めるまで寄る
- 上下の関係を見せる構図は、縦型のほうが伝わる
- 顔をやや上、文字を下という配置で撮影段階から統一する
- 横型素材のうち、切り抜きで成立するのは3割程度
- 3面に出すなら60秒以内。書き出しは1回で足りる
- 変換に費用をかけるより、内容を引き継いで撮り直すほうが質が上がる
補足すると、過去の横型素材を持っている場合は、変換の見積もりを取る前に自分で1本切り抜いてみてください。
編集アプリで中央を9:16に切るだけの作業です。1分で終わります。その1本を見て成立していれば、他の素材も同じ判断ができます。成立していなければ、20本まとめて変換する前に気づけます。
もう1つ、これから撮る場合は、撮影の前にスマートフォンの画面に目安線を表示させてください。上下15%の位置に線があるだけで、文字の入る場所を意識しながら撮れます。編集での手戻りがなくなります。
solezoreでは、縦型動画の制作と、既存素材の切り分けを承っています。まずは手持ちの素材が使えるかどうかを見るところからでも構いません。
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