

「FBAは高いと聞きましたが、自社で出したときと比べたことがありません」「全商品をFBAに入れたら、保管料で利益が消えました」――FBAのご相談は、この2つのどちらかから始まります。
先に結論をお伝えすると、FBAが高いか安いかは単体では決まらず、自社で出荷した場合の合計と比べて初めて判断できます。FBAとは、商品をAmazonの倉庫に預けることで、梱包、発送、購入者からの問い合わせ、返品の対応までをAmazonに任せる仕組みです。手数料は発生しますが、その代わりに自社から消える費用があります。
solezoreでは、FBAを社用車と社外のタクシーの比較にたとえて説明しています。自前で車を持てば1回あたりは安く見えますが、駐車場代と保険と人件費を足すと逆転する距離があります。判断に要るのは片側の金額ではなく、両方の合計です。
この記事では、任せられる範囲から、費用の内訳と計算、自社出荷との比べ方、向く商品と向かない商品、始め方の工程、売れ残った在庫の扱いまでを順に解説します。
FBAとは何か|任せられる範囲
結論: 預けたあとに任せられるのは、梱包、発送、購入者への対応、返品の受け取りの4つです。在庫をいつ、どれだけ送るかの判断は自社に残ります。
丸ごと任せられるわけではない、という前提から始まります。
預けてから入金までの流れ
工程は決まっています。
- 自社の倉庫からAmazonの倉庫へ商品を送ります
- 購入者が注文します
- Amazonが梱包して発送します
- 返品と問い合わせもAmazon側が受けます
- 売上から手数料を引いた金額が、おおむね2週間ごとに入金されます
自社でやるのは1番目だけになります。ただし、何をいくつ送るかの判断は自社の仕事です。ここを外に出せると考えると、在庫が合わなくなります。
自社出荷との違い・カートボックスとの関係
| 項目 | FBA | 自社出荷 |
|---|---|---|
| 配送の速さの表示 | 付く | 条件を満たせば付く |
| カートボックスの取りやすさ | 取りやすい | 取りにくい |
| 梱包と発送 | Amazon | 自社 |
| 問い合わせと返品 | Amazon | 自社 |
| 費用の出方 | 手数料として都度 | 送料・資材費・人件費として |
自社出荷でも、配送の速さを保証する制度を使えば同じ表示を得られます。ただし翌日配送とキャンセル率1%以下といった条件があり、中小の体制では維持が難しい水準です。
Amazonでは、同じ商品ページに複数の出品者が並ぶことがあります。購入ボタンを押したときに誰から買うかは、Amazonが選びます。
配送が速い出品者は、この選定で有利になります。同じ価格なら、FBAを使っている側が購入ボタンを取ります。 相乗り出品が多いカテゴリーでは、この差が売上の大半を決めます。
新規に作った自社専用のページでは、この争いは起きません。この場合、FBAを選ぶ理由は配送の速さと作業の削減に絞られます。
費用の内訳と計算
結論: かかるのは配送代行手数料と在庫保管手数料の2つです。前者は売れた個数、後者は預けている体積と日数で決まります。
計算の材料が違うため、分けて考えます。
配送代行手数料・在庫保管手数料
1点が売れて発送されるたびに発生します。サイズと重量で区分が変わります。
| 区分 | 目安のサイズ | 手数料の目安 |
|---|---|---|
| 小型 | 25cm×18cm×2cm以下・250g以下 | 250〜320円 |
| 標準 | 45cm×35cm×20cm以下・1kg以下 | 400〜520円 |
| 大型 | 100cm×50cm×50cm以下・2kg以下 | 520〜840円 |
| 特大 | 上記を超えるもの | 1,000円〜 |
金額は改定されるため、実際の判断はセラーセントラルの料金シミュレーターで確認します。区分の境目にある商品は、梱包を1cm縮めるだけで下の区分に入ることがあります。
預けている間、月単位で発生します。基準は体積で、10cm角(1,000立方センチメートル)あたり月3.26円が目安です。10〜12月は繁忙期の単価となり、4.37円に上がります。
10cm角の商品を100個預けている場合、通常の時期で月326円です。金額としては小さく見えますが、売れない在庫では毎月出ていき続けます。
365日を超えて残った在庫には、長期保管の料金が別に加算されます。1点あたり月16.36円が目安で、一部のカテゴリーでは270日から対象になります。
料金シミュレーターの使い方
セラーセントラルには、商品のサイズと価格を入れると手数料の合計が出る機能があります。出品を決める前に、必ず1回は通します。
入力するのは、販売価格、仕入れの原価、商品のサイズと重量の3つです。ここから、販売手数料と配送代行手数料を引いた残りが出ます。
残りが仕入れ原価を下回る商品は、FBA以前に出品する意味がありません。 この確認を先にすると、在庫だけ届いて売れない事態を防げます。

自社出荷と比べる手順
結論: 自社出荷の側は、送料と資材費だけでは足りません。出荷作業の人件費と、返品や問い合わせの対応時間まで含めて初めて比較になります。
比較の土台を揃える工程です。
自社出荷にかかる費用を洗い出す
数えるのは5つです。
- 配送料:契約している運送会社の1件あたりの単価
- 梱包資材費:段ボール、緩衝材、テープ、伝票
- 出荷作業の人件費:1件あたりの分数×時給
- 返品対応の時間:受け取り、検品、再出品の手間
- 問い合わせ対応の時間:配送状況の確認、遅延の連絡
3番目から5番目が抜けやすい部分です。自社の人が動いている時間は請求書に出てこないため、費用として認識されません。
時給1,200円の担当者が1件7分かけているなら、1件あたり140円です。 これを足さずに比べると、自社出荷が実際より安く見えます。
損益の分かれ目を出す・出荷件数で逆転する
販売価格3,000円、仕入れ原価1,000円の商品で比べた例です。
| 費用の項目 | FBA | 自社出荷 |
|---|---|---|
| 仕入れの原価 | 1,000円 | 1,000円 |
| 販売手数料(15%) | 450円 | 450円 |
| 配送代行手数料 | 450円 | — |
| 送料と梱包資材費 | — | 600円 |
| 出荷作業の人件費 | — | 140円 |
| 在庫保管手数料(月割) | 10円 | — |
| 残る利益 | 1,090円 | 810円 |
この例ではFBAのほうが1個あたり280円多く残ります。あわせて、購入ボタンを取りやすくなるぶん販売数そのものも増えるため、差はさらに開きます。
出荷が少ないうちは、自社出荷のほうが安く済むことがあります。人が動く時間が短いためです。
月100件を超えたあたりから、出荷作業の人件費が積み上がって逆転することが多くなります。1件7分なら100件で11時間40分、200件なら23時間20分です。
自社出荷を続ける判断をする場合は、この時間を誰が持つのかを先に決めておきます。ここが曖昧なまま増えると、他の業務が止まります。
使うことで変わる3つのこと
結論: 変わるのは、購入ボタンの取りやすさ、社内の作業時間、注文が増えたときの対応力の3つです。
金額以外の部分に、判断の材料があります。
購入ボタンと売上・社内の作業と成長への対応
配送が速い商品として扱われるため、購入ボタンを取りやすくなります。同じ商品を複数の出品者が扱っている場合、ここが売上の大半を決めます。
FBAに切り替えただけで売上が1.5〜2倍になる例は珍しくありません。 ただしこれは、相乗り出品が多いカテゴリーに限った話です。自社専用のページでは、同じ効果は出ません。
出荷、資材の発注、返品の受け取り、問い合わせの対応。これらが社内から消えます。
注文が増えたときの対応も変わります。自社出荷では1日10件と1日1,000件で必要な人数が違いますが、FBAでは同じです。急に売れた月に出荷が追いつかず、評価を落とす事故が起きません。
制約と向かない商品
結論: 同梱物と梱包の見た目を自社で決められなくなります。売れ行きの遅い商品や利益率の薄い商品では、手数料が利益を上回ります。
使わないほうがよい場合を先に押さえます。
同梱物と梱包の制約
Amazonの規約により、チラシや礼状の同梱は制限されます。自社ECへの案内を入れて再購入につなげたい場合、この制約が判断に影響します。
梱包の見た目もAmazonの基準になります。開封したときの体験そのものを商品の一部として設計しているブランドでは、ここが噛み合いません。
同梱で伝えたいことがある場合は、自社出荷の分だけ残す形も選べます。全部を預けるかどうかは、商品ごとに決められます。
向かない商品の条件
次のいずれかに当てはまる商品は、慎重に判断します。
- 利益率が20%を下回る:手数料を足すと赤字になります
- 単価が500円を下回る:配送代行手数料の比率が大きすぎます
- サイズが大きい:保管料と配送代行手数料の両方が上がります
- 売れ行きが遅い:保管料が積み上がり、365日を超えると長期分も加算されます
逆に向くのは、利益率25%以上、単価2,000円以上、繰り返し買われる商品です。消耗品はこの条件に当てはまることが多くなります。
全商品をまとめてFBAに入れるのは避けます。 商品ごとに判断し、混在させるほうが合理的です。
始め方の4工程
結論: 設定を有効にし、商品をFBAに切り替え、納品プランを作り、倉庫へ送る。この4つで開始できます。
作業自体は難しくありませんが、ラベルの工程だけ手間がかかります。
設定から納品まで
- セラーセントラルの設定画面でFBAを有効にします
- 在庫の管理画面から、対象の商品をFBAに切り替えます
- 納品プランを作り、送る商品と数量を入力します
- 指定された倉庫へ発送します
倉庫は自分で選べません。商品によって別々の倉庫を指定されることがあり、その場合は分けて送ります。納品してから在庫として反映されるまで、数日から1週間ほどかかります。
ラベルの扱い
商品1点ごとに識別用のラベルを貼ります。自社で印刷して貼るか、Amazonに代行してもらうかの2択です。
代行を頼む場合の費用は1点あたり20円が目安です。100点なら2,000円で、社内の作業時間と比べると外に出したほうが安く済む水準になります。
自社で貼る場合は、ラベルプリンターがあると速く終わります。手作業でシールに印刷して貼る形は、100点を超えると現実的でなくなります。
納品でつまずきやすい点
結論: つまずくのは、倉庫が複数に分かれること、在庫に反映されるまでの日数、繁忙期の締切の3つです。どれも事前に分かっていれば避けられます。
初回の納品で最も多く届く問い合わせがこの3つです。
倉庫が複数に分かれる
送り先の倉庫は自分で選べません。1回の納品プランでも、商品によって別々の倉庫を指定されることがあります。
分かれた場合は、そのぶん送料が増えます。1か所にまとめる有料の設定もありますが、費用と手間を比べて決めます。少量の納品では、分けて送るほうが安く済むこともあります。
初回は指定を見てから運送会社に集荷を依頼します。送り状を先に作ってしまうと、書き直しになります。
反映までの日数と繁忙期の締切
倉庫に届いてから在庫として反映されるまで、数日から1週間ほどかかります。届いた日から売れるわけではないため、逆算して送ります。
10〜12月に売る商品は、この日数に加えて繁忙期の混雑を見込みます。10月の時点で倉庫に入っている状態を目指すと間に合います。 11月に送ると、売れる時期に反映が間に合わないことがあります。
新商品の発売日が決まっている場合も同じです。発売の2週間前には納品を終える計画にしておくと、当日に在庫がない事故を避けられます。
在庫を戻す・処分する
結論: 預けた在庫は返送を依頼して手元に戻せます。売れ残りを放置するより、早い段階で引き揚げるほうが損失は小さくなります。
出口を知っておくと、預ける判断がしやすくなります。
返送と廃棄の依頼・引き揚げの判断
セラーセントラルから返送の依頼を出すと、指定した住所へ送り返してもらえます。費用は1点あたり50〜100円程度が目安です。
廃棄も同じ画面から依頼できます。手元に戻しても売り先がない商品では、返送料を払うより廃棄のほうが安く済む場合があります。
判断の基準は保管日数です。180日を超えて動いていない在庫は、365日の長期保管料が発生する前に判断します。
値下げやクーポンで売り切るのが第一の選択です。それでも動かない場合、返送か廃棄に切り替えます。
引き揚げた分の資金と保管の枠を、売れている商品に回すほうが合計の利益は大きくなります。撤退の基準を先に決めておくと、この判断が遅れません。
solezoreの支援事例|業種別の進め方
結論: solezoreでは、FBAに入れる前に商品ごとの利益と回転を試算します。ここでは2つの業種で、最初に何を変えたかを紹介します。
食品|回転の速い商品だけに絞って利益率が戻った例
ご相談をいただいたのは調味料とレトルト食品を扱うメーカーです。取り扱う42品すべてをFBAに入れており、保管料が月11万円まで膨らんでいる状態です。
商品ごとの回転日数を出すと、42品のうち18品が180日以上動いていませんでした。この18品が保管料の6割を占めています。
回転の速い14品をFBAに残し、残りは自社出荷に戻しました。180日を超えていた在庫は、クーポンで売り切れた分を除いて返送しています。
保管料は月4万円まで下がり、粗利率は3か月で9ポイント改善しました。担当の方からは「入れっぱなしにしていた自覚がなかった」というお言葉をいただきました。
医薬品|自社出荷を続ける判断をした例
衛生用品を扱う事業者から受けた相談です。FBAに切り替えるべきかの判断を求められました。
計算してみると、主力商品は1個あたりの単価が480円で、配送代行手数料の比率が高すぎました。加えて、同梱している使い方の説明書きが購入後の問い合わせを大きく減らしており、これを外せません。
結論として、FBAは使わず自社出荷を続ける形にしています。かわりに、出荷作業の手順を組み替えて1件あたり9分から5分に短縮しました。
FBAを使わない判断も同じくらい多く出します。 切り替えありきで計算を始めると、こうした結論に届きません。

よくある質問
Q. FBAと自社出荷は、混在させられますか?
A. 混在できます。商品ごとにどちらで出すかを選べるため、回転の速い主力商品はFBA、動きの遅い商品や単価の低い商品は自社出荷という分け方が現実的です。全商品をまとめてFBAに入れると、売れない在庫の保管料が積み上がります。
Q. FBAの手数料は、いくらぐらいかかりますか?
A. 配送代行手数料と在庫保管手数料の2つです。配送代行は小型で1点250〜320円、標準サイズで400〜520円が目安です。保管料は10cm角あたり月3.26円で、10〜12月は4.37円に上がります。料金は改定されるため、判断の前にセラーセントラルの料金シミュレーターで確認します。
Q. どのくらいの利益率があれば、FBAを使う意味がありますか?
A. 目安は利益率25%以上、単価2,000円以上です。利益率が20%を下回る商品や単価が500円を下回る商品では、手数料の比率が大きくなり赤字になることがあります。ただし、これは目安であって、自社出荷にかかる人件費まで含めて計算すると結論が変わる場合もあります。
Q. 預けた在庫を手元に戻すことはできますか?
A. できます。セラーセントラルから返送の依頼を出すと、指定した住所へ送り返してもらえます。費用は1点あたり50〜100円程度です。廃棄も同じ画面から依頼できるため、戻しても売り先がない商品では廃棄のほうが安く済む場合があります。
Q. ラベル貼りは自社でやらないといけませんか?
A. Amazonに代行してもらえます。費用は1点あたり20円が目安で、100点なら2,000円です。自社で貼る場合はラベルプリンターがあると速く終わりますが、手作業でシールに印刷して貼る形は100点を超えると現実的でなくなります。
Q. 長期保管料は、いつから発生しますか?
A. 365日を超えて残った在庫が対象で、1点あたり月16.36円が目安です。一部のカテゴリーでは270日から対象になります。180日を超えて動いていない在庫は、この期限を迎える前に、値下げで売り切るか返送するかを判断します。
まとめ
FBAを使うかどうかを判断するための要点を整理します。
- 任せられるのは梱包・発送・問い合わせ・返品の4つ。何をいくつ送るかは自社に残る
- 費用は配送代行手数料と在庫保管手数料の2つ。前者は個数、後者は体積と日数で決まる
- 判断は自社出荷の合計と比べる。人件費と返品対応の時間を必ず足す
- 出荷が月100件を超えると、自社出荷の人件費が積み上がって逆転しやすい
- 向くのは利益率25%以上・単価2,000円以上・繰り返し買われる商品
- 単価500円未満、利益率20%未満、売れ行きの遅い商品は慎重に判断する
- 全商品をまとめて入れない。商品ごとに判断して混在させる
- 180日動いていない在庫は、長期保管料が発生する前に売るか戻すかを決める
ここまで触れなかったことを1つ挙げると、FBAを使うと在庫が見えにくくなるという副作用があります。倉庫が手元にないため、残数の感覚が鈍り、欠品に気づくのが遅れます。
対策は単純で、月1回、残り日数の一覧を出して発注点を切っている商品を確認する時間を作ることです。10分で終わりますが、これがないと欠品で順位を落とす事故が起きます。
もう1つ、繁忙期の前には納品の締切が前倒しになります。10〜12月に売る商品は、10月の時点で倉庫に入っている状態を目指すと間に合います。
solezoreでは、商品ごとの利益と回転を試算したうえで、FBAと自社出荷の振り分けを設計しています。すでにFBAを使っていて保管料が膨らんでいる場合の整理だけ、というご相談も承っていますので、いまの在庫の状態を見るところからでも構いません。
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