

「伸びてきた矢先に在庫が切れて、順位が戻らなくなりました」「欠品が怖くて多めに入れたら、保管料で利益が消えました」――在庫のご相談は、この2つのどちらかから始まります。
先に結論をお伝えすると、この2つは反対の失敗に見えて、どちらも在庫の残り日数を数えていないことが原因です。Amazonの在庫管理とは、物の数を合わせる作業ではなく、検索順位と資金の両方を守るための業務にあたります。数が合っていても、残り日数が読めていなければ同じことが起きます。
solezoreでは、在庫を車の燃料計にたとえて説明しています。残量そのものより、あと何キロ走れるかが分かっていないと給油の判断ができません。数えるべきは個数ではなく日数です。
この記事では、欠品と過剰在庫の損失の違いから、適正在庫の計算、欠品を防ぐ仕組み、在庫パフォーマンス指数と保管上限、売れ残りの処理、繁忙期の備え、担当が変わっても回る形までを順に解説します。
欠品と過剰在庫|損失の出方が違う
結論: 欠品は順位という取り返しにくいものを失い、過剰在庫は資金を毎月削ります。緊急度は欠品のほうが高く、金額の大きさは過剰在庫のほうが読みにくくなります。
同じ在庫の失敗でも、性質がまったく違います。
欠品で失うもの
在庫が0になると、まず購入ボタンを失い、売上が止まります。ここまでは想像しやすい部分です。
問題はその先で、販売実績が積み上がらなくなることで検索順位そのものが下がります。再入荷しても順位は戻らず、回復に1〜3か月かかります。
その間に競合が上位を取ると、戻る場所がなくなります。育てた商品ほど、失うものが大きくなる構造です。
過剰在庫で失うもの
過剰在庫は、じわじわと利益を削ります。出ていくのは4つです。
- 在庫保管手数料:10cm角あたり月3.26円が目安。10〜12月は4.37円に上がります
- 長期保管の追加料金:365日を超えると1点あたり月16.36円が加算されます
- 資金の固定:売れない商品に仕入れ代金が縛られます
- 処分の費用:最終的に返送か廃棄をする際にかかります
このうち3番目が最も大きく、そして請求書に出てきません。売れている商品を仕入れられなかった機会損失は、保管料の何倍にもなります。
どちらを優先するか
緊急度では欠品が上です。順位は取り返しにくく、下がってからの回復に費用と時間がかかります。
ただし、欠品を恐れて多めに入れる判断を続けると、過剰在庫に振れます。どちらかに寄せるのではなく、残り日数で管理するのが両方を避ける道になります。
残り日数で見ると、欠品と過剰在庫を同じものさしで扱えます。日数が短ければ発注し、長ければ止める。判断が1つで済みます。
適正在庫の計算
結論: 計算式は、1日の平均販売数×(リードタイム×2+発注のサイクル)です。リードタイムを2倍にした分が、需要の変動と物流の遅れに対する余裕になります。
数式は単純で、材料が揃えば5分で出ます。
計算に使う3つの数字
必要なのは次の3つです。
- 1日の平均販売数:直近30日の販売個数を30で割ります
- リードタイム:発注してからAmazonの倉庫に反映されるまでの日数
- 発注のサイクル:何日に1回発注するか
2番目には、倉庫に届いてから在庫として反映されるまでの数日から1週間も含めます。ここを入れ忘れると、計算より早く在庫が尽きます。
実際に計算してみる・商品ごとに数字が変わる
| 条件 | 数値 |
|---|---|
| 1日の平均販売数 | 5個 |
| リードタイム(発注から在庫反映まで) | 14日 |
| 発注のサイクル | 30日 |
計算は、5個×(14日×2+30日)=5×58=290個です。この290個が、次の発注までに手元とAmazonの倉庫に持っておきたい量になります。
発注点は、リードタイムの2倍分にあたる140個です。残りが140個を切った時点で発注する運用にすると、届く前に尽きることがなくなります。
この計算は商品ごとに行います。リードタイムが仕入れ先によって違い、販売のペースも商品で違うためです。
主力の3〜5商品だけ計算して、残りは大まかな日数で管理する形でも構いません。全商品を精密に管理しようとすると、続かなくなります。

欠品を防ぐ仕組み
結論: 見るのは在庫数ではなく残り日数です。残り14〜30日を切った商品を毎月まとめて発注する形にすると、判断のたびに考える必要がなくなります。
仕組みにしないと、忙しい月に飛びます。
残り日数で見る・発注のアラートを決める
セラーセントラルの在庫管理画面では、現在の在庫数と直近の販売ペースが確認できます。ここから残り日数を出します。
在庫数だけを見ると判断を誤ります。100個あっても1日20個売れていれば5日分ですが、1日1個なら100日分です。同じ数字でも意味がまったく違います。
残り日数がリードタイム×2を下回った時点で発注します。リードタイムが14日なら28日分、7日なら14日分が目安です。
広告を強めた月や、まとめ買いが入った月は消化が読めません。広告費を増やす判断とセットで、在庫の残り日数を確認する手順にしておきます。
月1回まとめて処理する
毎日在庫を見る運用は続きません。月1回、30分の枠を取って全商品の残り日数を一覧で出し、発注点を切っているものをまとめて発注します。
この作業を月初に固定すると、忙しい月でも飛びません。日を決めていない運用は、繁忙期に真っ先に止まります。
主力の数点だけは、週1回2分で残り日数を見ます。ここが切れると他の数字がすべて崩れるためです。
複数の販路を持っている場合
自社ECや楽天と併売している場合、在庫の持ち方を先に決めておきます。共通の在庫を各販路に割り当てる形と、販路ごとに在庫を分ける形の2つがあります。
共通にすると在庫の総量は減らせますが、1つの販路で急に売れたときに他の販路が連鎖して欠品します。とくにFBAに預けた在庫は手元にないため、自社ECの注文に回すことができません。
分ける形なら連鎖は起きませんが、どちらかで機会損失が出ます。売上比率が7対3を超えるまでは、多いほうに寄せておくのが扱いやすい形です。
在庫の数を自動で同期する仕組みを入れる場合も、反映のずれが生じます。Amazon側の在庫が減ってから他の販路に反映されるまでに数分から数十分かかるため、その間に注文が入るとキャンセルが発生します。人気商品では、この時間差を見込んで各販路に余裕を持たせておきます。
在庫パフォーマンス指数と保管上限
結論: FBAを使っている場合、在庫の効率を示す指数が付きます。この数値が低いと預けられる量に上限がかかり、繁忙期に補充できなくなります。
売れ残りを放置すると、別の形で跳ね返ってくる仕組みです。
指数が下がると起きること・上げるためにやること
在庫パフォーマンス指数は0〜1,000点で示されます。回転の遅い在庫や、欠品したまま放置している商品があると下がります。
低い状態が続くと、FBAに預けられる量の上限が設定されます。上限がかかると、売れている商品の補充ができなくなり、欠品につながります。
繁忙期の直前に上限がかかると、その年の売り時を丸ごと逃します。 指数の管理が在庫管理の一部である理由がここにあります。
やることは3つです。回転の遅い在庫を減らす、欠品している商品を補充する、保管日数の長い在庫を値引きで消化する。
このうち1番目が最も影響します。180日以上動いていない商品を返送するだけで、数値が戻ることがあります。
過剰在庫の処理
結論: 判断の基準は保管日数です。180日を超えて動いていない在庫は、365日の長期保管料が発生する前に値引きか引き揚げかを決めます。
放置する判断だけは避けます。
処理の3つの選択肢・早く判断するほど損失が小さい
| 手段 | 費用の目安 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 値引き・クーポンで売り切る | 利益が減る | まだ需要がある商品 |
| 返送して手元に戻す | 1点50〜100円 | 別の販路で売れる商品 |
| 廃棄する | 返送より安い場合あり | 戻しても売り先がない商品 |
最初に試すのは値引きです。利益は減りますが、資金が戻り、保管料も止まります。
30日値引きしても動かない場合は、返送か廃棄に切り替えます。戻しても売り先がない商品では、返送料を払うより廃棄のほうが安く済みます。
180日で判断するのは、365日の長期保管料を避けるためです。ここを過ぎると、保管料に加えて1点あたり月16.36円が乗ります。
引き揚げた分の資金と保管の枠は、売れている商品に回せます。合計の利益で見ると、粘るより切り替えるほうが大きくなることがほとんどです。
判断を先送りしたくなるのは、仕入れた金額が頭に残っているためです。ただし、その金額はどう処理しても戻りません。すでに払った分ではなく、これから出ていく保管料のほうで判断します。
季節とセールへの備え
結論: 繁忙期は通常の3〜4倍まで需要が振れます。売り時の1〜2か月前には倉庫に入っている状態を目指して逆算します。
読み違えると、1年で最も大きな売上を落とします。
逆算のしかた
10〜12月に売る商品なら、10月の時点で倉庫に反映されている状態が目安です。納品してから在庫として反映されるまで数日から1週間かかり、繁忙期はさらに混雑します。
大型のセール期間も同じです。開催の30〜60日前から準備を始め、期間中の販売見込みを通常月の3〜4倍で置いて発注します。
締切は毎年変わるので、その年の告知で確かめます。
新商品と広告投入時
新商品は需要が読めません。少量から始めて、実績を見てから増やすほうが安全です。最初から大量に入れると、動かなかったときに保管料と資金の両方を失います。
広告を強める月も同じ扱いです。予算を2倍にすると販売数も動くため、在庫の残り日数を先に確認してから広告を増やします。
需要が読めないうちは、補充の回数を増やして1回の量を減らします。
使う道具と月次の作業
結論: 最初はセラーセントラルの標準機能で足ります。商品数が30を超えたあたりから、専用のツールを検討します。
道具を増やす前に、見る項目を減らすほうが先です。
標準機能でできること・専用ツールを検討する目安
セラーセントラルには、補充のアドバイス、在庫の年齢を示すレポート、在庫パフォーマンスの画面が用意されています。
このうち在庫年齢のレポートが最も使えます。保管日数ごとの在庫数が出るため、180日を超えているものがひと目で分かります。
商品数が30を超え、季節の変動が大きい商材を扱っている場合は、需要予測の付いたツールが役に立ちます。Jungle Scout や Helium 10 といった選択肢があります。
ただし、月額の費用がかかります。ツールで防げる欠品の金額が、月額を上回るかどうかで判断します。商品数が10前後なら、標準機能と表計算ソフトで十分です。
担当が変わっても回る形にする
結論: 在庫管理は担当者の記憶に依存しやすい業務です。発注点と手順を1枚の文書にしておくと、引き継ぎで止まりません。
属人化が最も起きやすい領域です。
文書に残す5項目・更新のタイミング
書くのは次の5つです。
- 在庫を確認する日と頻度
- 商品ごとの発注点(残り何日分で発注するか)
- 仕入れ先の一覧とリードタイム
- FBAへの納品手順とラベルの扱い
- 長期在庫の処理の基準
A4で1〜2枚に収まります。10項目を超えると読まれなくなるため、この5つに絞ります。
仕入れ先が変わったとき、リードタイムが変わったとき、商品が増えたとき。この3つのタイミングで更新します。
半年に1回、実態と合っているかを見返す時間も取ります。書いた当時と手順が変わっているのに文書だけ残っている状態が、いちばん危険です。
solezoreの支援事例|業種別の進め方
結論: solezoreでは、在庫数ではなく残り日数の一覧を作るところから始めます。ここでは2つの業種で、最初に何を変えたかを紹介します。
日用品・家電|保管上限がかかって補充できなくなった例
生活雑貨を扱う事業者から相談が寄せられました。主力商品を補充しようとしたところ、FBAの保管上限に達していて納品できないという状態です。
在庫年齢のレポートを出すと、扱う56品のうち23品が270日を超えていました。この23品が保管の枠を占めており、売れている商品を入れる余地がありません。
30日間クーポンで値引きし、それでも動かなかった14品を返送しています。あわせて、180日で判断する基準を社内の手順に入れました。
3か月で指数が基準を超え、保管上限の制限が外れています。担当の方からは「売れないものを置いていた自覚がなかった」というお言葉をいただきました。
アパレル|繁忙期の欠品を1年で解消した例
婦人服を扱うブランドからのご相談です。前年の年末に主力3品が欠品し、3週間販売が止まっていました。順位は年明けまで戻っていません。
原因は発注のタイミングでした。11月末に発注しており、リードタイムの21日と倉庫での反映を足すと、売り時の中盤に届く計算になります。
翌年は、10月中旬に倉庫へ反映されている状態を目標に逆算しました。数量は前年同月の3.5倍で置き、残り日数が42日分を切った時点で追加発注する運用にしています。
年末は欠品なしで乗り切り、期間中の売上は前年の3倍を超えました。足りなかったのは在庫の量ではなく、逆算の起点でした。

よくある質問
Q. 適正な在庫量は、どう計算すればいいですか?
A. 1日の平均販売数×(リードタイム×2+発注のサイクル)で出します。1日5個、リードタイム14日、30日ごとの発注なら290個です。リードタイムには、倉庫に届いてから在庫として反映されるまでの数日から1週間も含めます。ここを忘れると、計算より早く尽きます。
Q. 欠品してしまった場合、順位は戻りますか?
A. 時間はかかりますが戻ることもあります。ただし1〜3か月を見込む必要があり、その間に競合が上位を取っていると戻る場所がありません。実務では、元の順位を待つより、用途を含む別の語で入り直すほうが早く売上が戻ることがあります。
Q. 在庫は多めに持っておいたほうが安全ではないですか?
A. 保管料と資金の固定が発生します。とくに大きいのは資金の固定で、売れない商品に仕入れ代金が縛られると、売れている商品を仕入れられません。この機会損失は保管料の何倍にもなります。多めに持つのではなく、残り日数で管理します。
Q. 在庫の確認は、どのくらいの頻度で行えばいいですか?
A. 月1回で足ります。毎日見る運用は続きません。月初に30分の枠を取り、全商品の残り日数を一覧で出して、発注点を切っているものをまとめて発注します。日を決めていない運用は、繁忙期に真っ先に止まります。
Q. 売れ残った在庫は、どう処理すればいいですか?
A. 180日を超えて動いていない在庫から判断します。まず値引きやクーポンで30日試し、それでも動かなければ返送か廃棄です。返送は1点50〜100円が目安で、戻しても売り先がない商品では廃棄のほうが安く済みます。365日を超えると長期保管の料金が加算されます。
Q. 繁忙期は、どのくらい前から準備すればいいですか?
A. 30〜60日前です。10〜12月に売る商品なら、10月の時点で倉庫に反映されている状態を目指します。納品から反映までに数日から1週間かかり、繁忙期はさらに混雑します。数量は通常月の3〜4倍で置いて計算します。
まとめ
Amazonの在庫管理で売上を守るための要点を整理します。
- 欠品は順位を失い、過剰在庫は資金を削る。損失の出方が違う
- 過剰在庫で最も大きいのは、請求書に出てこない資金の固定
- 適正在庫=1日の平均販売数×(リードタイム×2+発注のサイクル)
- 見るのは在庫数ではなく残り日数。100個でも1日20個売れれば5日分
- 発注点はリードタイムの2倍分。月1回まとめて処理する形にする
- 売れ残りを放置すると保管の上限がかかり、売れている商品を補充できなくなる
- 180日動いていない在庫は、365日の長期保管料が付く前に判断する
- 繁忙期は30〜60日前から準備。数量は通常月の3〜4倍で置く
ここまで書かなかったことを1つ挙げると、在庫の判断は仕入れ先との関係で決まる部分が大きいという点があります。リードタイムが短くなれば、持つべき在庫は減ります。
年に1回、主要な仕入れ先とリードタイムの短縮を相談する時間を作ります。14日が10日になるだけで、必要な安全在庫が3割近く減ります。値引きの交渉より、こちらのほうが手元の資金に返ってきます。
もう1つ、欠品したときの記録を残します。いつ、どの商品が、何日切れたか。この記録が3件たまると、自社がどこで読み違えるのかが見えてきます。
solezoreでは、商品ごとの発注点の設計から、繁忙期の逆算、滞留在庫の整理までを承っています。いま何日分の在庫があるのかを出すところだけ、というご相談も承っていますので、現状の把握からでも構いません。
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