

「台本を書いたのですが、読んでいるのが画面に出てしまいます」「そもそも何をどの順番で言えばいいのか分かりません」――台本についてのご相談は、この2つが大半を占めます。
結論からお伝えすると、台本は原稿ではなく設計図です。一語一句を書くのではなく、どの場面が何の役割かを決めるものとして使うと、読んでいる感じが消えて、直す場所も見つかります。
solezoreでは、台本を建物の図面にたとえて説明しています。図面には壁紙の柄までは描きません。柱と部屋の役割が決まっていれば、内装は現場で決められます。
この記事では、台本を組む5つの部品、冒頭2秒の引きの型、証明の入れ方、尺ごとの配分、テンプレートの作り方までを、実際に制作している立場から解説します。
ショート動画に台本が必要な理由|書かないと何が起きるか
結論: 台本を書かないと、撮影後に内容を考え直す往復が発生します。制作にかかる時間の大半は、この往復で失われています。
まず、書かない場合に何が起きるかを整理します。
撮り直し、直す場所が分からない、任せられない
撮り終えてから「言い忘れた」「順番が違った」と気づくと、撮影に戻ります。1本あたり30分の撮影が、2回になります。
この往復は、編集の速度を上げても取り戻せません。編集アプリを新しくするより、6行の台本を書くほうが時間の削減幅が大きいという結果になります。
台本がないと、伸びなかったときに何を変えればいいか特定できません。感覚で作ったものは、感覚でしか直せないためです。
場面ごとに役割が決まっていれば、数字と突き合わせられます。冒頭で離脱しているなら引き、途中で落ちているなら本文、最後まで見られているのに動きがないなら次の行動、という切り分けができます。
台本が頭の中にあるうちは、その人しか作れません。担当者が変わった瞬間に、品質が元に戻ります。
型が文書になっていれば、別の人が同じ構成で作れます。外注する場合も、台本の形式を渡すだけで意図が伝わります。
台本の5つの部品
結論: 台本は引き、問題提起、解決策、証明、次の行動の5部品で組みます。どの部品に当たるか説明できない場面は、削ってかまいません。
順番も固定します。入れ替えると成立しません。
5部品の役割
- 引き(0〜2秒):届けたい人にだけ刺さる言葉を置く
- 問題提起:悩みを言葉にして、自分の話だと思ってもらう
- 解決策:商品やサービスを、ベネフィット1つに絞って出す
- 証明:なぜそれが可能なのかと、第三者の証拠
- 次の行動:具体的に何をすればいいかを1つ示す
海外で使われている構成も、実質同じ骨格です。呼び方が違うだけで、順番と役割は一致しています。
4番目が抜けやすい・書き方は箇条書きで足りる
証明を飛ばすと、良い話をしているのに信じてもらえません。「いい話ばかりのはずがない」という受け止め方で終わります。
抜けやすい理由は、話している側にとっては当たり前の情報だからです。なぜ安くできるのか、なぜ早いのかは、社内では説明する必要がないため、動画でも省かれます。
一語一句を書くと、読んでいるのが画面に出ます。1行ずつ、6行程度で足ります。
例外は冒頭の言葉です。ここだけは書いたとおりに言います。0〜2秒で判定が起きるため、その場で言い換えると意図がずれます。

冒頭2秒|引きの型と作り方
結論: 冒頭に社名やロゴを置くと、そこで流されます。置くのは、届けたい人が実際に使っている言葉です。
最も差が出る2秒です。
社名を先に出さない
知られている会社でも同じです。今は他のものが見たい、という状態で流れてくるためです。
代わりに置くのは、ターゲットが使っている単語そのものです。腰の治療なら「腰」、通信の見直しなら「スマホ代」。その単語で、自分の話かどうかの判定が起きます。
会社名を出す場所は、引きの直後です。誰の話かが分かってから名乗ると、飛ばされません。
引きの型を6つ持つ・引きだけを差し替えて比べる
毎回考えるのではなく、型から選びます。
| 型 | 中身 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 名指し | 「この動画が出てきた〇〇市の方へ」 | 地域や属性が絞れている |
| 違和感 | 本来こちらが頼む立場なのに向こうが頼む形 | 競合が多く、広告に見せたくない |
| 断言 | 「これで先月5,000円減りました」 | 数字で示せる変化がある |
| 問いかけ | 「なぜ戻ってしまうか、知っていますか」 | 誤解を正す内容 |
| 実演 | 変化を最初に見せる | 見た目で分かる商材 |
| 投稿風 | 広告に見えない通常の投稿の見た目 | 若い層に届けたい |
どれか1つが正解というわけではありません。同じ本文に対して3〜4種類の引きを作り、差し替えて比べるのが最も速い進め方です。
本文を固定して、冒頭だけを変えます。作り直す量が少なく、比較の条件もそろいます。
海外では、テストする変数として最も費用対効果が高いとされています。冒頭で止まらなければ、その先がどれだけ良くても見られないためです。
問題提起と解決策|絞り方
結論: 問題提起は短くします。ここが長いと本題に入る前に離脱します。解決策はベネフィットを1つに絞ります。
2番目と3番目の部品です。
問題提起は2行で足りる・解決策は1本に絞る
悩みを言葉にする役割ですが、長く語る必要はありません。「夕方には崩れている」「毎月の請求を見ていない」のように、状況を1つ言うだけで届きます。
問題提起にはもう1つ役割があります。ここで、対象でない人が離れます。これは失われた視聴ではなく、意図した選別です。
言いたいことを詰め込むと、何も残りません。1本の動画で伝わるのは1つだけです。
3つ伝えたいなら3本に分けます。分けたほうが本数も増え、どれが反応を取ったかも分かります。
誰を外すかを先に決める
台本を書く前に、この動画が向いていない人を1つ書き出します。届けたい人を決めるより、外す人を決めるほうが具体的に書けます。
たとえば「自分で調べて解決できる人」「価格だけで選ぶ人」「今すぐではない人」のどれかを外すと、問題提起で使う言葉が決まります。外す相手が決まっていない台本は、誰にも刺さらない文章になります。
動画の中身は絞るほど反応が出ます。一方で、広告の配信設定は逆に広げます。中身を絞ることと、届ける範囲を狭めることは別の話です。ここを取り違えると、反応も配信量も同時に落ちます。
証明|使える4種類
結論: 証明に使えるのは、実績の数字、第三者の評価、仕組みの説明、利用者の声の4種類です。1本につき1つで足ります。
ここが台本の質を決めます。
4種類の使い分け・医療や金融で使えない表現に注意する
- 実績の数字(導入◯件、継続率◯%など具体的な数)
- 第三者の評価(口コミ、掲載、受賞)
- 仕組みの説明(なぜ安く、なぜ早くできるのか)
- 利用者の声(実際の言葉を短く引用する)
このうち3番目が最も作りやすく、他社が真似しにくい証明になります。なぜそれが可能なのかを説明できると、数字がなくても納得されます。
業種によっては、効果や結果に触れる表現に制約があります。断定した言い方や、他との優劣を示す表現は避けます。
その場合は3番目の仕組みの説明に寄せます。何をどういう手順で行うかを示すだけでも、証明として成立します。制約のある業種ほど、この型が使いやすいという結果になります。
次の行動|具体的にする
結論: 次の行動は具体的なほど動きます。「お問い合わせはこちら」で終わると、押す前のためらいが残ります。
最後の部品です。
何を、どこで、何分で。置くのは1本に1つ
「無料相談はこちら」より「LINEで30秒、無料相談はこちら」のほうが動きます。次に何が起きるか想像できると、心理的なためらいが減るためです。
入れるのは3つです。何をするのか、どこで行うのか、どのくらい時間がかかるのか。このうち所要時間が最も抜けやすく、最も差が出ます。
プロフィールも見てほしい、保存もしてほしい、コメントもほしい、と並べると、どれもされません。
1本につき1つに絞ります。認知が目的の動画なら、次の行動を入れないという選択もあります。目的によって置くかどうかが変わります。
出口が複数あるときの置き方
問い合わせ、資料請求、来店予約と出口が複数ある場合は、動画ごとに割り当てます。1本の中で並べません。
割り当ての基準は、動画の中身がどの段階の人に向いているかです。悩みを言葉にした動画なら資料請求、使い方を見せた動画なら予約、というように対応させます。
出口を並べると、選ぶ手間が生まれて誰も進みません。1本1出口にすると、どの内容がどの出口につながるかも分かるようになります。3か月ほど回すと、自社の場合にどの組み合わせが動くかが見えてきます。
尺の配分|30秒・60秒・90秒
結論: 尺は30〜90秒が基本です。短くすること自体を目的にして、証明を削ると逆効果になります。
部品ごとの時間配分を決めておきます。
尺別の配分の目安・長さでなく密度で決まる
| 部品 | 30秒 | 60秒 | 90秒 |
|---|---|---|---|
| 引き | 2秒 | 2秒 | 2秒 |
| 問題提起 | 4秒 | 8秒 | 10秒 |
| 解決策 | 10秒 | 20秒 | 30秒 |
| 証明 | 8秒 | 22秒 | 40秒 |
| 次の行動 | 6秒 | 8秒 | 8秒 |
引きの長さは尺にかかわらず2秒で固定です。伸ばしても意味がありません。伸びるのは解決策と証明の部分です。
内容が濃ければ、長くても最後まで見られます。逆に、薄い内容を30秒に収めても最後まで見られません。
一方で、最後まで見られた割合は尺が短いほど自然に高くなります。30秒の動画と90秒の動画を同じ数字で比べても意味がないため、尺と一緒に読みます。
テンプレートの作り方と使い回し
結論: 台本は毎回ゼロから書かず、型を4つ用意して材料を当てはめます。書く時間が20分から5分まで下がります。
型があると、担当者が変わっても品質が戻りません。
4つの型を用意する・材料の在庫を持つ
- 質問に答える型(よく聞かれることを1つ)
- 誤解を正す型(勘違いされていることを1つ)
- 手順を見せる型(3ステップまで)
- 比べる型(2つの違いを1点だけ)
このうち2番目が反応を取りやすい型です。読者が知っているつもりのことを覆すと、最後まで見られます。
型があっても、材料がなければ書けません。実際に聞かれた質問を20個書き出しておきます。この作業に30分かけると、2か月分の材料になります。
型4つ × 材料20個で、組み合わせは80通りになります。すべてを使うわけではありませんが、ネタが尽きたと感じる状態にはなりません。
外注するときに渡すもの
制作を外に出す場合、渡すのは完成した台本ではなく、型と材料です。台本まで作って渡すと、社内の作業量が減りません。
渡すのは3つです。5部品の形式、証明に使える社内の情報、過去に伸びた動画の冒頭2秒。この3つがあれば、制作側が台本を書けます。
逆に、この3つを渡さずに「良い感じの動画を」と依頼すると、当たり障りのない構成が戻ってきます。証明の材料は社内にしかないため、ここだけは自社で用意します。外注しても社内に月3〜5時間は残る、というのはこの部分の作業を指しています。
つまずきやすい点
結論: 台本の失敗は、内容ではなく分量と口調に出ます。書きすぎるか、書き言葉のまま話すかの2つです。
書いた後に確認します。
書きすぎない・書き言葉のまま話さない
一語一句を書くと、目線が原稿を追います。棒読みになり、表情も止まります。
対策は、書いたものを一度声に出して読み、自分の言葉に置き換えてから撮ることです。台本は言い方を決めるものではなく、順番を決めるものとして扱います。
「〜となります」「〜いたします」が続くと、案内文の読み上げに聞こえます。実際に人に説明するときの言い方に直します。
判定の方法は簡単です。書いた台本を、同僚に説明するつもりで読んでみて、違和感があれば直します。画面の向こうにいるのは1人なので、大勢に向けた言い方にしません。
solezoreの支援事例|業種別の進め方
結論: 台本の型は業種で変わりませんが、証明に使える材料が変わります。制約のある業種ほど、仕組みの説明に寄せます。
2つの事例を挙げます。
医療|証明を仕組みの説明に寄せた
クリニックから、表現の制約が多く何を話せばいいか決まらない、という一点でのご相談でした。効果に触れられないため、動画が施設の紹介で終わっていました。
証明の部分を、結果ではなく手順の説明に置き換えています。どういう検査を行い、何を見て、どの順番で説明するか。ここを話す構成にしました。
その結果、動画からの予約が月2件から月7件に増えています。表現の制約は、話す内容がない状態とは別でした。
通信|引きだけを4種類作って比べた
通信のサービスを扱う企業から、20本作ったが反応の差が大きい、という相談をいただきました。本文の作りは毎回違っていました。
本文を1つに固定し、冒頭2秒だけを名指し・断言・問いかけ・実演の4種類作って並行して出しています。
比較の結果、断言の型が最も止まり、3秒までの再生の割合が16%から29%まで上がりました。以降は断言を基本の型として、本文の題材だけを差し替える運用にしています。

よくある質問
Q. 台本は何文字くらいで書けばいいですか?
A. 文字数ではなく行数で考えてください。5つの部品に1行ずつ、合計6行程度で足ります。一語一句を書くと読んでいるのが画面に出るため、順番だけを決める形が扱いやすいところです。冒頭の言葉だけは、書いたとおりに言います。
Q. 生成AIに台本を書かせてもいいですか?
A. 材料の整理には使えますが、そのまま撮ると平板になります。使うなら、聞かれた質問の分類や、引きの候補を複数出させる用途が向いています。証明の部分は社内にしかない情報なので、ここは自分で書いてください。工程ごとにどこまで任せられるかはAIを使った運用の実務で整理しています。
Q. 同じ台本を使い回してもいいですか?
A. 型は使い回します。材料を差し替えるだけで別の動画になります。むしろ毎回違う構成にすると、伸びた理由が分からなくなります。変えるなら冒頭2秒から、本文は固定するという順番が扱いやすいところです。
Q. 演者が台本どおりに話してくれないときはどうすればいいですか?
A. 順番だけ守ってもらえれば問題ありません。言い方はその人の言葉のほうが自然に伝わります。ただし冒頭の2秒だけは、書いたとおりに言ってもらってください。ここで判定が起きるため、言い換えると意図がずれます。
Q. 尺は短いほうが有利ですか?
A. 短いほうが最後まで見られた割合は上がりますが、証明を削ってまで短くすると逆効果です。30〜90秒が基本で、内容が濃ければ長くても見られます。数字を読むときは、尺と一緒に読んでください。
Q. 業種の制約で言えることが少ない場合はどうすればいいですか?
A. 証明を仕組みの説明に寄せてください。結果に触れられなくても、何をどういう手順で行うかは話せます。制約のある業種ほど、この型が使いやすくなります。判断に迷う表現は、月初にまとめて社内で確認する形にすると止まりません。
まとめ
ショート動画の台本について、要点を整理します。
- 台本は原稿ではなく設計図。場面ごとの役割を決めるもの
- 書かないと撮り直しが発生し、伸びなかったときに直す場所も分からなくなる
- 引き・問題提起・解決策・証明・次の行動の5部品で組む
- 冒頭に社名やロゴを置かない。届けたい人が使う単語を置く
- 引きの型を6つ持ち、本文を固定して冒頭だけ差し替えて比べる
- 証明に使えるのは実績の数字・第三者評価・仕組みの説明・利用者の声
- 次の行動は、何を・どこで・何分でを入れる。所要時間が最も抜けやすい
- 尺は30〜90秒。引きは2秒で固定、伸びるのは解決策と証明
- 型4つ × 材料20個で80通り。ネタが尽きた状態にならない
- 書きすぎない。声に出して自分の言葉に置き換えてから撮る
補足すると、台本を書く前に、同じ内容を誰かに1分間で説明してみてください。
そのとき最初に出てくる一言が、冒頭に置く言葉になります。書こうとすると硬い言い方になりますが、話してみると、実際に伝わる順番が分かります。録音して文字にするのが、最も速い台本の作り方です。
もう1つ、既に何本か投稿している場合は、伸びた動画の冒頭2秒だけを書き出してみてください。共通する形が1つ見つかるはずです。それが自社の引きの型になります。
型ができても、書き続ける時間が取れないという話はよく聞きます。制作を外注したときの相場と依頼の流れを知っておくと、台本だけ自社で持つ、という分け方も選べます。
solezoreでは、台本の型づくりから制作までを承っています。既存の動画を見て、5部品のどこが抜けているかをお伝えするところからでも構いません。
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