

「100万回再生された動画があるのに、その月の売上は前月と同じだった」「顔出ししていた社員が辞めた途端、投稿が止まった」――TikTokの運用代行を一度使った企業から、こうしたご相談をよくいただきます。
結論からお伝えすると、TikTokの失敗はほかのSNSと形が違います。数字が出ないのではなく、数字は出るのに事業が動かない。ここが最も多い型です。おすすめ欄が知らない人にどんどん配ってくれるぶん、再生数だけは簡単に積み上がるからです。
solezoreでは、TikTokの運用を評価するときに再生数を最初の指標に置きません。代表が現役で30万人規模のアカウントを運用している立場から言うと、伸びる動画を作ることと、売れる導線を作ることは別の仕事です。
この記事では、TikTok特有の失敗がどこで生まれるのかを、動画の中身・おすすめ欄の仕組み・演者と制作体制・出口の設計に分けて整理し、最後に発注前へ戻して潰しておく7点を並べます。
TikTokの失敗は、数字が出ないことではない
結論: TikTokは知らない人へ動画を配る仕組みを持っているため、再生数そのものは比較的出ます。失敗の中心は、出た数字が事業につながらないことと、運用を続ける体制が崩れることの2つに寄っています。
フォロワーが少なくても伸びる
ほかのSNSでは、フォロワーが少ないと投稿が誰にも届きません。TikTokは違います。投稿するたびに、まだフォローしていない人へ少しずつ配られ、反応が良ければ配る量が増えていきます。
始めたばかりのアカウントでも数万回再生が起きるのはこのためです。ここだけを見ると、うまくいっているように見えます。
TikTokはフォロワーを増やす場所だと思われがちですが、配られる量を決めているのはフォロワー数ではなく、その動画そのものへの反応です。フォロワー10万人のアカウントの投稿が3,000回で止まることも、逆も普通に起きます。
伸びても売れないことがある
配られる相手は、商品を探している人ではありません。暇つぶしに眺めている人です。ここが検索と決定的に違います。
検索が、目的を持って棚を探しに来た人だとすれば、TikTokは駅前を歩いている人に声をかけるようなものです。数は圧倒的に多い。ただ、その人はいま買い物に来ているわけではありません。
だから、再生数と売上は自動ではつながりません。つなげるための設計を誰かが担っていなければ、100万回再生は100万回の暇つぶしで終わります。
止まるときは一気に止まる
もうひとつの特徴が、崩れ方の急さです。演者が抜けた、撮影の日程が取れなくなった、編集が追いつかなくなった。理由はどれでもよく、週3本の投稿が週1本になった時点でおすすめ欄への露出は目に見えて落ちます。
積み上げたものが数週間で薄れる。TikTokの運用には、そういう手触りがあります。
止まった後の立ち上げには、最初の立ち上げと同じ時間がかかります。
再生数は出たのに売れない、という失敗
結論: 見る数と買う数のあいだには段があります。プロフィールへ何人来て、そこから何人が外へ出たか。この2つを測っていない運用は、再生数がいくら出ても売上の話ができません。
「バズれば売れると思っていました」と振り返る担当者の方は多いです。責められる思い込みではありません。広告やメディアで語られるのは、たいてい再生数の話だからです。
| 見ている数字 | 何を表すか | 事業に近いか |
|---|---|---|
| 再生数 | 何人の画面に流れたか | 遠い。眺めただけの人を含む |
| 完全視聴率・再視聴 | 最後まで見られたか | 中間。おすすめ欄での伸びに直結する |
| 保存 | あとで見返す価値があったか | 近い。検討している人の行動 |
| プロフィール遷移 | 発信者に興味を持ったか | 近い |
| リンククリック | 外へ出た人 | 最も近い。ここが空なら売上は動かない |
リーチと購買のあいだにある段
再生100万回のうち、プロフィールへ来るのは多くても数千人。そこからリンクを踏むのは、さらにその一部です。段を1つ降りるたびに桁が変わると考えてください。
途中の段を測っていないと、どこで人が落ちているのか分かりません。動画を作り直すべきなのか、プロフィールを直すべきなのか、飛んだ先のページを直すべきなのか。判断ができないまま、次の動画を作ることになります。
集まった人が買う人ではない、その先も空いている
もうひとつ多いのが、伸びた動画の内容と商品がずれている場合です。面白さで伸びた動画には、面白いものを求める人が集まります。
化粧品の会社で、社員の日常を撮った動画が一番伸びていた。フォロワーも増えた。けれど増えたのは、その社員のファンだった――こういうことが実際に起こります。
意外と多いのが、動画より手前のつまずきです。プロフィールに商品の説明がない。リンクが会社のトップページに向いていて、商品まで3回タップしないと着かない。
ここは動画を1本作るより早く直せます。にもかかわらず、代行会社の作業範囲に入っていないことがよくあります。
おすすめ欄の仕組みから来る失敗
結論: TikTokは動画の反応を見て配る量を決めます。最初の数秒で離脱される、最後まで見られない、投稿直後の反応が薄い。この3つのどれかが起きていると、内容の良し悪しに関係なく配られません。
最初の2秒で決まる・完全視聴率と再視聴
スワイプは反射です。考えて飛ばしているのではなく、指が勝手に動く。だから冒頭に会社名やあいさつを置くと、そこで終わります。
代行会社の作る動画が伸びないとき、まず疑うのはここです。テレビCMの作り方で組まれた動画は、TikTokではほぼ冒頭で切られます。
最後まで見られたかどうかが、配られる量に強く効きます。60秒の動画を30秒で切られるより、20秒の動画を最後まで見てもらったほうが評価は高くなります。
長く作れば情報を多く入れられますが、それは伸びない方向へ働きます。入れたい情報の量ではなく、持たせられる時間の長さから決めるほうが結果は良くなります。
投稿直後の初速
投稿した直後は、少人数へ配られます。その少人数の反応で次の量が決まるので、初速が悪い動画は最初の数百回で止まります。たとえるなら、最初に配られた数百人は味見役です。ここでの評判が悪ければ、次の皿は出てきません。
投稿の時間帯を揃える、最初のコメントを自分で置く、といった細かい手当てが効くのはこのためです。派手さのない作業ですが、やっている会社とやっていない会社で差が出ます。
演者に依存した体制の失敗
結論: TikTokは人が映る場所です。だからこそ、演者が1人しかいない体制は最も壊れやすい。退職・異動・出演の拒否のどれか1つで、アカウントが止まります。
社員が辞めると止まり、出演の合意も残っていない
顔を出していた社員が辞めてしまった――というお声が、この分野では最も多く寄せられます。過去の動画を残してよいのかも分からず、更新も止まったまま数か月が過ぎている。
代行会社は動画を作れますが、社内の人選まではできません。ここは発注側にしか動かせない部分です。
退職した社員から、動画を消してほしいと言われる。これは実際に起こります。そのときに、どこまで使ってよいと合意していたかが残っていないと、判断のしようがありません。
撮影の前に、使う範囲と期間、退職後の扱いを1枚にしておく。手間はかかりませんが、あとから作ることはできません。
演者を増やしておく
対策は単純で、最初から2人以上出しておくことです。1人の人気に寄ると数字は伸びやすい反面、その人が抜けたときの落差が大きくなります。
社員が出られない事情がある場合は、外部の演者を起用する手もあります。あわせて考えたいのが、そのときの費用と権利の扱いで、動画を二次利用できるかどうかは契約の書き方で変わります。
制作の量が回らなくなる失敗
結論: TikTokは本数が要ります。週1本では、おすすめ欄に乗る機会そのものが足りません。撮影の段取りを決めずに始めると、2か月目から本数が落ちます。
数字で見ると分かりやすいところです。週3本と週1本では、月の投稿数が12本と4本。当たりを引く機会が3倍違います。1本あたりの完成度を上げるより、まず本数を確保するほうが早く結果に近づきます。
| 週の本数 | 必要な撮影日 | 現実的な体制 | 起きやすいこと |
|---|---|---|---|
| 週1本 | 月1回 | 兼務1人でも回る | おすすめ欄に乗る機会が足りず、伸びる前に終わる |
| 週3本 | 月2回(まとめ撮り) | 演者2人+編集は外注 | 台本の在庫が切れると止まる |
| 週5本以上 | 月2〜4回 | 撮影と編集の役割を分ける | 質が落ちて完全視聴率が下がる |
撮影日をまとめていない・台本の在庫が切れる
1本ずつ撮ると、そのたびに場所と人の予定を合わせることになります。半日で6本撮る形にすると、月2回の予定調整で週3本が回ります。
うまくいっている現場は、ほぼ例外なくまとめ撮りです。思いついたときに撮る形は、続きません。
まとめ撮りをするには、撮る前に台本が要ります。ここが詰まると撮影日そのものが飛びます。
台本づくりは代行会社に任せられる部分ですが、材料――現場で起きたこと、よくある質問、商品の裏側――は社内からしか出ません。ここが出てこないと、どこかで見た企画の焼き直しになります。
地味ですが効きます。撮った動画、商品写真、ロゴ、過去の投稿データ。これらがどこにあるか決まっていないと、代行会社は毎回聞くことになり、そのたびに1日ずつ止まります。
音源と素材で足をすくわれる失敗
結論: 個人が使える音源と、企業アカウントが使える音源は違います。流行の曲をそのまま使って、あとから動画を削除することになった例は珍しくありません。
商用利用できる音源
流行っている曲を自社のアカウントでも使ってよいのか、というご質問をいただきます。答えは、多くの場合は使えません。
TikTokは商用利用できる楽曲のライブラリを別に用意していて、企業アカウントはそこから選ぶのが基本です。個人アカウントで使える曲の一覧をそのまま当てにすると、範囲を外れます。
代行会社がこれを知らずに流行曲を当てているケースが、たまにあります。伸びていた動画を後から消すのは、いちばんもったいない失敗です。
他人の動画の使い回し・映っている人の合意
参考になる動画を引用したい場面はよくあります。ただ、出典を書けば使ってよいという話ではありません。権利者の許諾が要る領域です。
対象となるのは他社が撮影した映像だけでなく、テレビ番組の切り抜きや、有名人が映っている素材も含まれます。逆に、自社で撮った映像に自社の商品が映っている場合は対象外です。
社員だけでなく、店内のお客様や通行人が映ることもあります。顔が判別できる形で出すなら合意が要ります。
撮影の前に声をかける段取りを決めておくと、あとから編集でぼかす作業が減ります。
代行会社の得意分野を取り違える失敗
結論: TikTokの支援会社は、動画を作る会社・伸ばす会社・売る会社に分かれます。求めているものと違う得意分野の会社に頼むと、双方が真面目にやっても噛み合いません。
伸ばす会社と、売る会社は違う
再生数を作ることに長けた会社は確かに存在します。ただ、その会社が売上まで面倒を見るとは限りません。
提案を受けたときに、成果として何を約束しているかを見てください。再生数とフォロワー数だけが並んでいるなら、売上の設計は範囲外だと考えたほうが安全です。
動画制作の会社に運用を頼むと、きれいな動画は上がってきますが、企画と分析が薄くなりがちです。逆に運用会社に制作まで頼むと、映像の質は落ちることがあります。
どちらが良いという話ではなく、自社に足りないほうを埋めるという考え方が合います。
TikTokは広告の仕組みも持っています。投稿した動画をそのまま広告に流す形もあり、運用と広告は地続きです。
ただ、運用代行の契約に広告の運用が含まれているかは会社によって変わります。含まれていない場合、広告費だけ払って誰も設計していない状態になります。
出口を作らないまま運用する失敗
結論: 動画を見た人がどこへ向かうのかを決めないまま始めると、再生数だけが積み上がります。TikTokの中で完結させるのか、外へ出すのか。ここは最初に決めておく部分です。
どこへ繋ぐか|ショップ、ライブ、自社ECとLINE
アプリの中で購入まで完結する形です。離脱が少ない反面、扱える商材と手数料の条件があり、対象外の商品もあります。
動画とライブの両方から売れる形なので、在庫を持っている事業とは相性が良いです。
動画で知ってもらい、ライブで説明して買ってもらう。この組み合わせは、単価が高い商品や説明の要る商品で効きます。
ただしライブは体力の要る仕事です。週何回やるかを決めずに始めると、これも続きません。
外へ出す形です。プロフィールのリンクから自社サイトへ送るか、いったんLINEで受けてから案内するか。
すぐ買う商品でなければ、LINEを挟むほうが結果につながることが多いです。TikTokで知った人はその場では買わず、あとで思い出して買うからです。
発注前に潰しておく7点
結論: ここまでの失敗の大半は、契約の前に確かめれば避けられます。会社について3点、制作体制について2点、出口について2点。合わせて7点です。
会社を確かめる3点は、順に効きます。
- 自社で運用しているアカウントがあるか:他社の支援だけをしている会社と、自分でも運用している会社では、話の具体性が変わります
- 実際に動く担当者に会えるか:営業の方と運用の方が違うのはよくあることなので、契約前に会わせてもらえるかを聞きます
- 得意分野が制作なのか、伸ばすことなのか、売ることなのか。提案書の成果指標を見れば、たいてい分かります
制作体制の2点は、発注側の宿題でもあります。週何本を、月何回の撮影で作るのか。台本の材料を社内の誰が出すのか。ここが決まっていないと、どの会社に頼んでも2か月目に止まります。
出口の2点は、契約書に書いておく価値があります。どこで買ってもらうのか、何の数字で良し悪しを判断するのか。再生数を成果指標にしないだけでも、その後の会話がずいぶん変わります。
すでに失敗している場合の立て直し
結論: いま止まっているアカウントを動かし直すときは、新しい企画を考える前に、過去の投稿を分類することから始めます。何が効いて何が効かなかったかは、すでに手元にあります。
過去半年の投稿を、内容の種類ごとに分けて、保存とプロフィール遷移で並べ替える。作業としては半日ほどです。これで、続けるべき方向とやめるべき方向がだいたい見えます。
そのうえで、演者と撮影日を先に決めます。企画は後で構いません。順番を逆にすると、良い企画があっても撮れない状態が続きます。
原因が代行会社にあったのか、社内の準備にあったのかの切り分けは、TikTokに限らず共通する話なので、別の記事にまとめています。
solezoreの支援事例|業種別の進め方
外注していたTikTokアカウントを引き継ぐご依頼は、solezoreでも多いほうです。2件、進め方をご紹介します。
食品|再生数を落として、売上が動いた
引き継いだ時点で、月間の再生数は200万回を超えていました。それでもECの売上は動いていません。前の運用は、商品と関係のない大喜利のような動画で伸ばしていたのです。
方針を変え、商品を使う場面と、作っている現場を見せる内容に寄せました。再生数は3分の1に落ちます。担当者の方は最初かなり不安そうでした。
けれど、プロフィールへの遷移とリンクのクリックは増えていきました。3か月目には、ECの新規購入がTikTok経由で動き始めます。眺める人は減り、買う人が増えたということです。
アパレル|演者を2人に増やしてから伸びた
こちらは、始める前の準備に時間をかけた例です。
ご相談の時点で、出演できる社員が1人しかいませんでした。そこで、いきなり撮り始めずに、社内で出演できる人をもう1人見つけるところから始めます。1か月かかりました。
結果としてこれが効きます。2人の掛け合いにしたことで台本の幅が広がり、片方が繁忙期でも撮影日を動かさずに済むようになりました。最初の1か月は何も投稿していませんが、その1か月が無ければ半年目に止まっていたはずです。
よくある質問
Q. 再生数が伸びないのですが、代行会社を替えるべきでしょうか?
A. 替える前に、伸びなかった動画の完全視聴率を見てください。最初の2秒で落ちているのか、途中で切れているのかで打ち手が変わります。代行会社がこの数字を出せず、説明もできないのであれば、替える判断の材料になります。
Q. 週に何本くらい投稿すればよいですか?
A. 週3本を最低ラインと考えています。週1本では、おすすめ欄に乗る機会そのものが足りません。ただし本数を増やして質が落ちると完全視聴率が下がるので、まとめ撮りで無理なく作れる本数から決めるのが現実的です。
Q. 顔出しできる社員がいません。それでもTikTokはできますか?
A. できます。商品の手元だけを映す形、店内や工場の様子を見せる形、文字と音声で構成する形があります。ただし人が映る動画より伸びにくい傾向はあるので、その前提で本数と期間を長めに見ておくほうが安全です。外部の演者を起用する選択肢もあります。
Q. バズった動画があるのに売上が変わりません。何から見ればよいですか?
A. プロフィールへの遷移数と、そこからのリンククリック数の2つです。遷移が少ないなら動画とプロフィールの繋がりに、クリックが少ないならプロフィールの中身に問題があります。飛んだ先のページで止まっている場合もあるので、そこまで分けて見ます。
Q. 契約期間はどれくらいで考えるべきですか?
A. 最低3か月、判断は6か月と考えています。TikTokは初期に伸びることもありますが、それが再現できるかは3か月ほど見ないと分かりません。ただし1か月目で投稿本数が計画どおり出ていない場合は、6か月を待たずに話し合う時期です。
まとめ
TikTokの運用代行で失敗するとき、原因はたいてい動画の質ではありません。再生数と売上のあいだにある段を誰も測っていないこと、演者が1人しかいないこと、撮影の段取りが決まっていないこと。この3つが上位です。
優先順位をひとつ挙げるなら、演者を2人にするところから手をつけてください。動画の質は途中からでも上げられますが、演者が抜けたアカウントは作り直しに近くなります。
やらないほうがよいことも1つ。再生数を成果指標にした契約は結ばないほうが賢明です。数字を作ること自体は難しくなく、そして売上とは連動しないからです。
最後に、これは本文で触れなかった話ですが――TikTokは飽きられるのが早い場所です。同じ形式の動画は3か月ほどで反応が鈍ります。伸びている形をずっと続けられる前提で計画を立てないほうが、長く続きます。
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