

「顔を出せる人がいないので、読み上げで作っています」「読み上げにしたら再生は伸びたのですが、問い合わせが増えません」――音声読み上げについてのご相談は、この2つが典型です。
結論からお伝えすると、音声読み上げは手段としては有効ですが、行動が起きにくいという代償があります。最後まで見られる割合は上がっても、その先の問い合わせや購入につながりにくい傾向があります。使う場面を分けるのが前提です。
solezoreでは、読み上げを字幕付きの案内放送にたとえて説明しています。情報は正確に伝わりますが、誰かに勧められた感覚は残りません。人が話す動画とは、残るものが違います。
この記事では、読み上げが向く場面と向かない場面、3つのやり方の違い、ツールの費用、読み間違いへの対処、自動字幕との組み合わせまでを、実際に制作している立場から解説します。
ショート動画で音声読み上げを使う場面
結論: 読み上げが向くのは、情報を正確に伝える動画です。人を信じてもらう必要がある動画には向きません。
まず、使いどころを分けます。
向いている内容
手順の説明、数字の紹介、一覧の読み上げ、比較の提示。事実を並べる内容は、読み上げのほうが聞き取りやすくなります。
読み上げは滑舌が安定し、速度も一定です。人が話すと言い間違いや速度のばらつきが出ますが、読み上げにはそれがありません。
情報を目的に見ている人には、この安定感が読みやすさとして働きます。手順を確認するために見返す動画では、むしろ有利です。
向いていない内容
サービスの紹介、経営者の考え、利用者への呼びかけ。信じてもらう必要がある内容は、人が話すほうが伝わります。
誰が言っているかで信頼が変わるという前提があります。読み上げには話し手がいないため、この部分が空白になります。
実写とアニメーションを比べた検証でも、最後まで見られるのはアニメーションでしたが、その後の行動は実写が上回っています。読み上げも同じ構造です。
併用するという選択
1本の中で分けることもできます。導入と締めは人が話し、手順の部分だけ読み上げにする形です。
顔を出す人がいる場合は、この形が最も無理がありません。全編を読み上げにする必要はなく、伝えたい内容によって切り替えます。
顔を出せる人が本当にいない場合でも、声だけは社内の人が担当するという選択があります。読み上げより手間はかかりますが、残るものが変わります。
3つのやり方|面の機能・外部ツール・自分の声
結論: やり方は、面の内蔵機能、外部のツール、自分で録音するの3つです。手間と質が段階的に変わります。
順に見ていきます。
面の内蔵機能を使う
TikTokやInstagramには、入力した文字を読み上げる機能が用意されています。追加の費用はかかりません。
利点は手軽さです。編集の中で完結し、他のツールを覚える必要がありません。始めるだけなら、この方法が最も速く済みます。
一方で、声の種類が限られており、同じ声の動画が大量に存在します。聞いた瞬間にどの機能を使ったか分かるため、独自性は出しにくくなります。
外部のツールを使う
音声を生成するツールを使うと、声の種類、速度、抑揚を細かく設定できます。書き出した音声を編集アプリに読み込んで使います。
作業は1工程増えますが、同じ声を使い続けることでアカウントの識別につながります。声を固定すると、面をまたいでも同じ印象になります。
商用で使う場合は、利用の範囲を確認します。無料で使えるものでも、事業者としての利用に条件が付く場合があります。
自分で録音する
最も手間がかかりますが、最も伝わる方法です。顔を出さずに声だけ担当する形になります。
読み上げと比べて、間の取り方や強弱で意味を伝えられます。滑舌や言い間違いは、編集で削れば問題になりません。
社内に話せる人がいる場合、この方法から検討します。1本あたり10〜15分の録音時間が増えるだけで、伝わり方が変わります。

使うと不利になる場面
結論: 読み上げが不利に働くのは、信頼を積み上げる段階と、規制のある業種です。ここは人が話す形に寄せます。
線引きを明確にします。
信頼が必要な段階
まだ知られていないアカウントで、サービスを紹介する動画を読み上げで作ると、広告として受け取られます。
誰が言っているか分からない状態で、良いことだけを並べても届きません。証明の部分が空白になるためです。
実績の数字や仕組みの説明を入れても、話し手がいない状態では説得力が下がります。この段階では、人が出る動画を優先します。
規制のある業種
医薬品、医療、金融など、表現に制約がある業種では、読み上げの動画が不利に働く場合があります。
理由は2つあります。誰が説明しているのか分からないこと、そして機械的な読み上げが一方的な情報提供に見えることです。制約のある業種ほど、説明する人の顔と立場を出すほうが安全です。
社内の担当者や有資格者が説明する形にすると、内容の範囲も明確になります。
大量生産に流れる危険
読み上げは制作が速いため、本数を増やしやすい方法です。ここが落とし穴になります。
中身が薄い動画を大量に出すと、アカウント全体の評価が下がります。本数は判断材料をつくりますが、内容が伴っていなければ材料になりません。
読み上げに切り替えて本数が3倍になった場合、1本あたりにかける時間が3分の1になっていないかを確認します。
ツールの選び方と費用
結論: 面の内蔵機能は無料、外部のツールは月1,000〜3,000円が目安です。声を固定したいかどうかで選びます。
費用から整理します。
費用の目安・選ぶときの基準
| 方法 | 費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 面の内蔵機能 | 無料 | 手軽。声が他と同じになる |
| 無料の音声ツール | 無料〜 | 商用の条件を要確認 |
| 有料の音声ツール | 月1,000〜3,000円 | 声の種類が多く、抑揚を調整できる |
| ナレーションの外注 | 1本3,000〜1万円 | 人が読む。品質は最も高い |
月8本を出す場合、有料のツールで1本あたり200〜400円です。ナレーションの外注は1本3,000円からなので、10倍以上の差になります。
確認するのは3つです。
- 商用での利用が認められているか
- 声を固定して使い続けられるか
- 読み方を個別に修正できるか
3番目が実務では最も重要です。固有名詞や専門用語を正しく読めないツールは、毎回修正の手間が発生します。
無料のツールでも、この3つを満たすものはあります。費用より、条件で選びます。
読み間違いへの対処
結論: 固有名詞と数字は必ず読み間違えます。書き方を変えて読ませるのが最も速い対処です。
対処の方法を決めておきます。
カタカナで書き直す・読み上げの確認を工程に入れる
社名、商品名、専門用語は、読みをカタカナで入力します。表示するテロップは正しい表記のまま、読み上げる文字だけを差し替えます。
この方法で、ほとんどの読み間違いは解決します。ツールの設定を探すより速く済みます。
数字も同じです。「3〜5本」が正しく読まれない場合、「さんぼんからごほん」と入力します。単位の読み方は特に間違えやすい部分です。
書き出す前に、必ず一度通して聞きます。目で見ているだけでは読み間違いに気づきません。
確認を飛ばした動画は、公開後にコメントで指摘されます。信頼に関わるため、1本あたり1分の確認を工程に入れます。
複数人で作っている場合は、読み替えの一覧を共有します。同じ語を毎回別の人が直している状態を避けます。
自動字幕との組み合わせ
結論: 読み上げの文字はそのままテロップに使えます。二重に作業する必要はありません。
作業を減らします。
入力した文字をそのまま使う
読み上げに入力した文章は、テロップの原稿としても使えます。1行10〜13文字に区切って配置します。
人が話した動画では文字起こしの確認が必要ですが、読み上げではその工程が不要です。ここが読み上げの作業上の利点になります。
ただし、読ませるためにカタカナに変えた部分は、表示では正しい表記に戻します。ここを混同すると、画面に読み仮名が出ます。
テロップの量に注意する
読み上げの動画は、音声とテロップが完全に一致します。この状態は、情報量としては多く見えますが、単調になりやすい形です。
全文を表示するか、要点だけにするかを決めます。手順の説明は全文、それ以外は要点だけが扱いやすいところです。
画面が文字で埋まると、映像の情報が入りません。読み上げの動画ほど、画面の切り替えを意識して入れます。
素材が足りないときの埋め方
人が映らない動画は、画面に置くものが不足しがちです。同じ画像を10秒映すと、そこで離脱が起きます。
用意しやすい素材は4つあります。
- 商品や資料を手元で撮った短いカット
- 作業や準備の場面(顔が入らない角度で撮る)
- 数字や比較を示す簡単な図
- 過去の投稿で使った写真
このうち2番目が最も使い回しがききます。1日撮りためておくと、半年分の差し込み素材になります。顔が入らない角度なら、演者の手配も不要です。
図を作る場合は、凝った作りにしません。数字が2つ並んでいる程度で足ります。読み上げの動画は情報量が多くなりやすいため、画面はむしろ単純にします。
つまずきやすい点
結論: 読み上げの動画で数字が伸びない場合、原因は音声ではなく構成にあります。声を変えても解決しません。
原因の切り分けをします。
音声を疑う前に構成を見る・声を頻繁に変えない
読み上げにしたから伸びない、という判断は早すぎます。冒頭2秒、証明の有無、次の行動の具体性を先に確認します。
読み上げでも、構成が整っていれば数字は動きます。逆に、人が話していても構成が崩れていれば伸びません。
音声は3つある要素のうちの1つで、構成と編集のほうが影響が大きい部分です。
聞き慣れた声はアカウントの識別につながります。動画ごとに声を変えると、同じアカウントだと認識されにくくなります。
変えるなら3か月に1回まとめて、というくらいの頻度が適当です。試すなら、同じ内容の動画を2種類作って比べます。
複数人で作っている場合は、使う声を1つに決めて共有します。人によって違う状態にしません。
社内で運用するときの決め事
結論: 読み上げは複数人で分担しやすい方法です。そのぶん、決めておかないと動画ごとに品質が変わります。
先に3つを決めます。
使う声と速度を1つに決める
担当者ごとに好みの声を選ぶと、同じアカウントの動画に聞こえなくなります。使う声を1つに決め、速度も固定します。
速度は、標準よりやや速めが読みやすい水準です。編集で1.1〜1.2倍にすることを前提に、読み上げの段階では標準のままにしておくと調整しやすくなります。
抑揚の設定も揃えます。設定を変えられるツールでは、標準の状態を1つ保存しておき、そこから始める形にします。
読み替えの一覧を共有する
社名、商品名、専門用語の読み方を一覧にして共有します。担当者ごとに直していると、同じ語が違う読み方で出ます。
一覧は表の形で持ちます。表示する表記と、読み上げに入力するカタカナの2列で足ります。新しい語が出るたびに1行足す運用にすると、半年で実務に必要な分がそろいます。
外注する場合も、この一覧を渡します。渡さないと、毎回同じ指摘を繰り返すことになります。
確認する人と範囲を決める
読み上げの動画は制作が速いため、確認が追いつかないと本数だけが増えます。確認する人を1人決めます。
見る範囲は、読み間違いと表現の2つです。表現の判断が必要な業種では、月初にまとめて確認する形にすると、1本ごとに止まりません。
確認にかかる時間は1本あたり3〜5分です。月10本なら30〜50分で、これを確保できない場合は本数のほうを見直します。
solezoreの支援事例|業種別の進め方
結論: 読み上げの是非は業種ではなく、動画の目的で決まります。情報を伝える動画と、信じてもらう動画を分けた企業は数字が動いています。
2つの事例を挙げます。
マーケティング支援|導入と締めだけ人が話す形にした
支援会社から、全編を読み上げで作っているが問い合わせにつながらない、という相談です。月12本を投稿していました。
最後まで見られた割合は38%と高い一方で、リンクのクリックは1%に届いていませんでした。手順の説明は読み上げのまま、導入と締めの合計12秒だけを代表者が話す形に変更しています。
3か月後、リンクのクリックが1%から2.6倍に上がりました。制作の負荷は、録音の10分が増えただけです。誰が言っているかが分かる部分を12秒足しただけの変化でした。
医薬品|有資格者が説明する形に切り替えた
医薬品を扱う企業から、読み上げで作った動画の表現について社内で判断が分かれる、というのが相談の中身でした。
読み上げの動画は説明の主体が不明確で、確認する側も判断しにくい状態でした。有資格者が自分の言葉で説明する形に切り替え、話せる範囲も先に決めています。
確認にかかる時間が1本30分から10分に下がり、月4本だった投稿が月9本になりました。表現に関する差し戻しも、3か月で6件から1件に減っています。

よくある質問
Q. 音声読み上げで作った動画は伸びにくいですか?
A. 最後まで見られる割合はむしろ上がる傾向があります。問題はその先で、問い合わせや購入につながりにくくなります。誰が言っているかで信頼が変わるためです。情報を伝える動画には向き、信じてもらう必要がある動画には向きません。
Q. 面の内蔵機能と外部のツールはどちらがいいですか?
A. 始めるだけなら内蔵機能で足ります。ただし同じ声の動画が大量に存在するため、独自性は出ません。声を固定してアカウントの識別につなげたい場合は、外部のツールを使ってください。月1,000〜3,000円が目安です。
Q. 固有名詞が正しく読まれないときはどうすればいいですか?
A. 読み上げに入力する文字をカタカナに変えてください。表示するテロップは正しい表記のままにします。ツールの設定を探すより速く解決します。数字と単位も間違えやすいため、書き出す前に一度通して聞く工程を入れてください。
Q. 顔を出せる人がいない場合、読み上げしか選択肢はありませんか?
A. 声だけ社内の人が担当する方法があります。手元や商品を映しながら、顔を出さずに話す形です。1本あたり10〜15分の録音時間が増えるだけで、伝わり方が変わります。読み上げより先に、この選択肢を検討してください。
Q. 読み上げにすると本数を増やせますが、増やしたほうがいいですか?
A. 1本あたりにかける時間が減っていないか確認してください。制作が速いぶん、中身が薄くなりやすい方法です。本数は判断材料をつくりますが、内容が伴っていなければ材料になりません。本数を3倍にする場合、企画にかける時間は減らさないでください。
Q. テロップは読み上げた文章をそのまま出せばいいですか?
A. 出せます。人が話した動画と違い、文字起こしの確認が不要な点は利点です。ただし全文を表示すると画面が文字で埋まります。手順の説明は全文、それ以外は要点だけに絞り、画面の切り替えを意識して入れてください。
まとめ
ショート動画の音声読み上げについて、要点を整理します。
- 読み上げは最後まで見られやすい一方、その先の行動が起きにくい
- 向くのは手順・数字・一覧など事実を並べる内容
- 向かないのはサービス紹介や呼びかけなど、信じてもらう内容
- 導入と締めだけ人が話す併用の形が、最も無理がない
- やり方は面の内蔵機能・外部ツール・自分で録音の3つ
- 顔を出せなくても、声だけ社内の人が担当する選択肢がある
- 費用は内蔵機能が無料、外部ツールが月1,000〜3,000円
- 固有名詞と数字はカタカナで入力して読ませる
- 読み上げの文字はテロップにそのまま使える
- 数字が伸びないときは、音声でなく構成を先に見る
補足すると、読み上げで作った動画を1本選んで、冒頭の12秒だけを自分の声に差し替えてみてください。
同じ内容でも、印象が変わることが分かります。全編を録音する必要はなく、誰が言っているかが分かる部分が最初にあるかどうかで、その先の受け取られ方が変わります。
もう1つ、既に読み上げで運用している場合は、最後まで見られた割合とリンクのクリックを並べてみてください。前者だけが高い状態なら、伝わってはいるが動いていないという読み方になります。直す場所は音声ではなく、次の行動の示し方です。
読み上げで本数を確保できるようになると、次に詰まるのは編集の時間です。編集を外注したときの相場と依頼の流れを知っておくと、自分でやる場合と比べて判断できます。
solezoreでは、読み上げと実写の使い分けを含めた運用の支援を承っています。既存の動画を見て、どの部分を人が話す形にすべきかをお伝えするところからでも構いません。
この記事を書いた solezore に相談する
記事に書ききれない具体策・料金・事例は、無料相談で。SNS/EC/SEO の領域別に専門家が対応します。

