「半年払い続けたのに、フォロワーが300人しか増えていない」「投稿は毎週上がってくるけれど、問い合わせが1件も来ない」――SNS運用代行を一度使った企業から、こうしたご相談をよくいただきます。
結論からお伝えすると、うまくいかなかった案件の多くは、代行会社の力量だけで決まっていません。目的が決まらないまま走り出した、素材が社内から出てこなかった、承認に2週間かかった。発注側に原因の一部がある例が、実際にはかなりの割合を占めます。
当社(solezore)では、失敗の原因を代行側と発注側に切り分けないまま次の会社へ移ると、同じことがもう一度起きると考えています。会社を替えれば直る失敗と、替えても直らない失敗があるためです。
この記事では、失敗がどこで生まれるのか、契約後のどの時点で気づけるのか、そして気づいたあと何から手をつければよいのかを、外注で伸びなかったアカウントを引き継いできた立場から整理します。
失敗と呼ばれている状態は3つに分かれる
結論: 一口に失敗と言っても、数字が動かない・数字は動くが売上に繋がらない・運用そのものが止まる、の3つは原因も打ち手もまったく違います。まずどれに当てはまるかを決めないと、対処のしようがありません。
数字が動かない
いちばん多いのがこの型です。投稿は毎週きちんと上がっている。デザインも整っている。それでもフォロワーが増えず、再生数も三桁のまま横ばいになる。
原因は、アカウントの設計そのものにあることが大半です。誰に向けたアカウントなのかが決まっていないと、投稿は毎回別の人に語りかける形になり、どの層にも刺さりません。
数字は動くが売上に繋がらない
再生数は取れている。フォロワーも月に数千人ずつ増えている。それなのに、ECの売上も問い合わせも動かない。
この型は、外から見ると成功しているように見えるぶん、気づくのが遅れます。半年経ってから「そういえば売上は何も変わっていない」と気づく、というパターンです。集まっている人が買う人ではない、という単純な理由であることが多いのです。
運用そのものが止まる
返信が遅くなる。月次のレポートが出てこなくなる。担当者が3か月で2回替わる。そして、いつのまにか投稿の間隔が空いていく。
これは品質の話ではなく、体制の話です。受注量に対して人が足りていない会社で起きます。
原因を代行側と発注側で切り分ける
結論: 会社を替えれば直る失敗と、替えても直らない失敗があります。切り分けをせずに乗り換えると、立ち上げ直しの3か月を失っただけで同じ場所に戻ります。
「うまくいかないのは業者の質が低いから」と思われがちですが、私たちが引き継いだ案件を見ていくと、原因が発注側だけにあるケース、両方にまたがるケースが相当数あります。実際には、片方だけが悪いという状況のほうが珍しいくらいです。
代行側に原因があるとき
見分け方は単純で、提案書と月次レポートに自社の話がどれだけ書かれているかを見ます。業界一般の話、SNSの一般論、他社の成功事例。それだけで構成されているなら、その会社は貴社のアカウントを見ていません。
もうひとつは、数字の報告のあとに何が書いてあるかです。今月の再生数は◯◯でした、で終わっているレポートは、分析ではなく記録です。
発注側に原因があるとき
こちらは自覚しにくいので、具体的に挙げます。商品写真の依頼を出して2週間返事がない。投稿案の確認が月末にまとめて来て、その時点で内容が古くなっている。社内の誰が最終判断をするのか決まっていない。
代行会社はこれを言いにくい立場にあります。お金をもらっている側から「素材が出てこないので進みません」とは伝えづらい。結果、言わないまま数字が出ない月が積み上がっていきます。
両方にまたがるとき
いちばん厄介なのが、成果の定義が最初からずれている場合です。発注側は問い合わせを増やしたかった。代行側はフォロワーを増やす契約だと理解していた。どちらも約束を守っているのに、片方は失敗だと感じている。
契約書と提案書を読み返すと、そもそも別のことが書いてあった――そういう例は珍しくありません。
発注側で起きている、見えにくい失敗
結論: 代行会社に渡す前に社内で決めておくことが3つあります。目的、出せる素材、判断する人。この3つが空欄のまま契約すると、どの会社に頼んでも同じ結果になります。
数字から入りましょう。私たちが引き継いだアカウントで、前の会社との契約書に「目的」がひとことでも書かれていた例は、半分に届きません。多くは業務内容――投稿本数、レポートの頻度、撮影の回数――だけが並んでいます。
目的が決まらないまま始まる
「とりあえずSNSをやっておかないと」という状態で始めた運用は、評価の物差しが無いまま進みます。フォロワーが増えれば喜び、増えなければ不満を持つ。しかしフォロワー数は、そもそも目的だったのでしょうか。
目的は1つに絞ったほうが結果が出ます。認知を広げる投稿と、いま買う人に向けた投稿は、内容も見せ方も別物だからです。両方を同じアカウントで追うと、どちらも中途半端になります。
素材と情報が社内から出ない
SNS運用は、材料を持ち込んで料理してもらう仕組みに近いところがあります。冷蔵庫が空のままシェフを雇っても、出てくるのは既製品の盛り合わせです。
代行会社が用意できるのは構成と編集と分析であって、商品そのものの魅力や、現場でしか撮れない場面ではありません。ここを丸ごと外注できると考えていると、当たり障りのない投稿が並びます。
承認の速度が成果を決める
見落とされがちなのがここです。SNSは反応が読めない世界なので、出してみて、反応を見て、次を変える。この回転の速さがそのまま成果になります。
承認に1週間かかる会社と、その日のうちに返す会社では、同じ3か月でも試せる回数が5倍近く変わります。この回転は自転車のようなもので、漕ぐのをやめた瞬間に倒れます。運用の巧拙より、この差のほうが大きく出ることさえあるのです。
代行側で起きている失敗
結論: 代行会社側の失敗は、提案・実務・分析の3か所で起きます。契約前に見抜けるのは提案だけで、残り2つは始まってから分かります。だからこそ早い時点での見極めが要ります。
提案が汎用のまま通ってしまう
提案書を読んで、自社の名前を別の会社名に置き換えても違和感がないなら、それは汎用の提案です。テンプレートを使うこと自体は悪くありませんが、中身まで共通だと運用も共通になります。
動く人が実務を知らない
営業の方は詳しかったのに、担当が替わってから話が通じなくなった――というご相談は、繰り返し届きます。
私たちが提案の場で必ずお伝えしているのは、実際に手を動かす人に会わせてもらってください、という一点です。ここを確認できる会社かどうかで、その後がかなり分かれます。
分析が投稿数の報告で終わる
月次レポートに、今月の投稿数・再生数・フォロワー増減が並んでいる。数字は正しい。ただ、その数字を受けて来月何を変えるのかが書かれていない。
数字を並べる作業は自動化できます。お金を払う価値があるのは、その数字の読み方と、次の一手のほうです。
契約から1か月・3か月・6か月で見るもの
結論: SNSの成果は3か月から6か月かかりますが、うまくいっていない兆候はもっと早く出ます。1か月目に見るのは数字ではなく段取り、3か月目に見るのは反応の質、6か月目に初めて事業への効きを見ます。
「まだ3か月だから様子を見よう」と待つうちに、気づけば1年が過ぎていた――というお声が、本当に多く寄せられます。待つべき期間と、待っても変わらない兆候は別のものです。
1か月目に見るもの
この時点でフォロワーの数を見ても意味がありません。見るのは、約束した本数が出たか、初回の分析が来たか、こちらの質問に返事が来るか。
段取りが1か月目で崩れている会社は、3か月目に良くなりません。ここは経験上かなりはっきりしています。
3か月目に見るもの
数字を見始めるのはここからです。ただしフォロワー数ではなく、保存された数とプロフィールへの遷移を見ます。買う手前にいる人の行動だからです。
もう1つ、伸びた投稿があったときに、その理由を代行会社が説明できるかを確かめます。たまたま伸びましたね、で終わるなら、再現する道筋を持っていません。
6か月目に見るもの
ここで初めて、事業側の数字と突き合わせます。問い合わせの件数、社名やブランド名での検索、ECサイトへの流入。
半年やって事業側が1ミリも動いていないなら、続けるかどうかの判断をする時期です。もっとも、動いていない理由がSNSではなく着地先――サイトや商品ページ――にあることもあり、そこを確かめずに代行会社を替えると同じ結果になります。
契約の形そのものが失敗を招くことがある
結論: 月額固定・成果報酬・スポットには、それぞれ失敗しやすい形があります。合わない形を選ぶと、双方が誠実に動いていても不満だけが残ります。
| 契約の形 | 向いている状況 | 失敗しやすい点 |
|---|---|---|
| 月額固定 | 継続してアカウントを育てたい/体制ごと任せたい | 成果が出なくても費用が変わらず、惰性で続きやすい |
| 成果報酬 | 何を成果とするかが明確に測れる | 成果の定義が曖昧だと、達成の解釈で揉める |
| スポット(単発) | 立ち上げ・撮影・改善診断など区切りがある仕事 | 運用が続かず、施策が単発で終わる |
| 一部だけ委託 | 社内に担当がいて、制作や分析だけ補いたい | 役割の線引きが曖昧だと、抜け落ちる作業が出る |
月額固定は、成果が出ていない月も同じ金額が動きます。だからこそ、3か月ごとに見直す前提を最初から契約に入れておくほうが健全です。
成果報酬は一見すると発注側に有利ですが、成果の定義が緩いと逆に揉めます。フォロワー1人あたりいくら、という設計だと、買った数字で達成される余地が残るためです。
失敗に気づいたあと、最初にやる3つ
結論: 解約や乗り換えを考える前に、現状を数字で押さえる・アカウントの権限を確認する・契約書の解約条項を読む。この3つを先に済ませないと、交渉でも移行でも不利になります。
感情が動いているときほど、順番を守ったほうが結果が良くなります。腹が立っている状態で解約を告げて、アカウントの管理権限を渡してもらえなくなった――そんな事態は避けたいところです。
現状を数字で押さえる
管理画面の数字は、権限を失うと見られなくなります。契約開始時点と現在の主要な数字を、画面のまま保存しておきます。
これは相手を疑う作業ではなく、次の会社に正しく引き継ぐための準備です。前の半年で何が効いて何が効かなかったかを渡せると、立ち上げ直しの時間が短くなります。
アカウントの権限を確認する
意外と多いのが、アカウントそのものが代行会社の管理下にあるケースです。特に、立ち上げから任せた場合に起きます。
オーナー権限が自社にあるか。ビジネスマネージャに紐づいているのはどちらの会社か。広告アカウントの支払い情報は誰の名義か。ここは今日のうちに確認しておく価値があります。
契約書の解約条項を読む
最低契約期間が残っていれば、途中でやめても費用は発生します。解約の予告が2か月前必要な契約もあります。違約金の対象となるのは中途解約だけで、期間満了は対象外という書き方が一般的ですが、逆の条項が入っていることもあるため条文で確かめます。
あわせて見るのが、制作物の権利です。撮影した写真や動画を自社で使い続けられるのか、契約が切れたら使えなくなるのか。ここを確認しないまま解約して、素材を全部失った例があります。
立て直しの道は3つある
結論: いまの会社と作り直す・別の会社へ移す・社内に戻す。原因が発注側にあるなら、乗り換えても結果は変わりません。切り分けの結果によって選ぶ道が決まります。
いまの会社と作り直す
意外に思われるかもしれませんが、私たちが勧めることが多いのはこの道です。原因が発注側の準備不足だったなら、会社を替えても再現するからです。
やり方は、契約を仕切り直すこと。目的を1つに書き直し、出せる素材の量を正直に伝え、承認する人を決める。そのうえで3か月の期限を切って再評価します。
別の会社へ移す
代行側の体制に原因があるなら、移すのが早いです。担当者が続けて替わる、レポートが出てこない、こちらの質問に答えられない。これらは会社の構造から来ているので、話し合いでは変わりません。
ただし移る前に、次の候補には失敗の経緯をそのまま伝えたほうがよいです。隠すと、同じ設計をもう一度提案されます。
社内に戻す
外注の形そのものが合っていなかった場合の選択です。商品や現場の空気が価値の中心にある業種では、社内の人が撮った素材のほうが強いことがあります。
全部を戻す必要はありません。撮影と投稿は社内、構成の設計と分析だけ外部、という分け方は現実的で、費用も抑えられます。
乗り換えるときに失うもの
結論: 会社を替えると、権限とデータと制作物と時間を失う可能性があります。失うものを先に数えたうえで、それでも移る価値があるかを決めます。
権限とデータ
インサイトの生データや、広告の運用履歴は、権限を外れると取り出せなくなります。解約を伝える前にまとめて控えておくのが安全です。
制作物の権利
写真・動画・イラスト・テンプレート。誰が権利を持つかは契約書によって違います。買い取りになっているのか、利用許諾なのか、契約終了で切れるのか。
編集元のデータ(プロジェクトファイル)まで受け取れるかも確認しておきたいところです。完成品だけ受け取っても、次の会社が手直しできません。
立ち上げ直しの時間
ここがいちばん大きい損失です。引き継ぎに2〜4週間、新しい体制が回り始めるまで1〜2か月、数字が動き出すまでさらに3か月。半年近くが再びかかります。たとえるなら、走り出した電車を一度停めて、次の便を待つ時間です。
だからこそ、切り分けを飛ばして乗り換える判断が高くつくのです。
費用の掛け方を段階に分けて失敗を減らす
結論: 最初から全業務を任せる契約が、失敗の規模を大きくします。試す期間を区切り、任せる範囲を段階的に広げると、合わなかったときの損失が小さくなります。
| 段階 | 任せる範囲 | 期間の目安 | 見るもの |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 現状の診断・構成の設計 | 1か月 | 提案の具体性、自社を見て書いているか |
| 第2段階 | 制作と投稿(分析は共同) | 3か月 | 反応の質、伸びた理由を説明できるか |
| 第3段階 | 運用全体・広告・キャスティング | 6か月〜 | 事業側の数字(問い合わせ・EC流入) |
第1段階だけを単発で依頼できる会社は、そう多くありません。ただ、断られるかどうかも判断材料になります。診断だけを受けられる会社は、自社の仕事に自信を持っていることが多いためです。
もうひとつ、料金を公開している会社を候補に入れておくと比較が楽になります。相場が分からないまま見積もりを並べても、高いか安いかを判断できないからです。
solezoreの支援事例|業種別の進め方
外注で伸びなかったアカウントを引き継ぐご依頼は、solezoreに来る相談の中でも多いほうです。2件、進め方をご紹介します。
宿泊|半年分の数字を並べたところから始めた
引き継いだ時点のアカウントは、フォロワー4,200人、月間の再生数は横ばい、予約サイトへの流入はほぼゼロ。前の会社の月次レポートは投稿本数と再生数だけが並んでいました。
最初にやったのは、過去半年の投稿を1本ずつ分類する作業です。館内の設備を紹介する投稿と、周辺の食べ歩きを紹介する投稿では、保存される率に5倍近い差がありました。前の運用は、設備紹介に8割を割いていたのです。
翌月から手を入れたのは3か所です。
- 構成の比率:設備紹介8割を、周辺紹介6割へ入れ替え
- プロフィールの導線:予約ページへ直接飛ぶリンクに差し替えた
- 投稿の締めに、保存を促す一文を固定で置いた
3か月目には予約サイトへの流入が動き始め、指名検索も増えました。
日用品・家電|最初に打った手が外れた
こちらは、私たちの読みが外れた例です。
商品の使い方を丁寧に見せる方向で組み直したところ、再生数は伸びたのに保存が付きませんでした。2か月目に方針を変え、購入した人が実際に困った場面――収納しにくい、音が思ったより大きい――を先に見せてから解決する形にしたところ、保存とコメントが伸び始めます。
ご担当者からは、うちの弱点を出す投稿に社内の抵抗があったと後から伺いました。そこを一緒に説得材料まで作れたことが、この案件では効いたのだと思います。
よくある質問
Q. 何か月続けて成果が出なければ、失敗と考えるべきでしょうか?
A. 事業への効きを見るなら6か月です。ただし1か月目に段取りが崩れている、3か月目に伸びた投稿の理由を説明できない、という状態であれば、6か月待たずに話し合う時期だと考えています。
Q. 契約期間が残っているのですが、途中で解約できますか?
A. 契約書の解約条項次第です。最低契約期間が設定されていれば残期間の費用が発生することが多く、解約の予告期間が定められている場合もあります。まず条項を確認し、そのうえで期間を残したまま運用の内容を変える交渉も選択肢に入ります。
Q. 前の代行会社への不満を、次の会社に話しても問題ないでしょうか?
A. むしろ話したほうが良い結果になります。何を試して何が効かなかったかは、次の設計の材料になるからです。守秘義務のある資料をそのまま渡すのは避け、実施した施策と結果を自分の言葉で伝える形が安全です。
Q. 社内に戻したいのですが、担当を置く余裕がありません。どうすればよいですか?
A. 全部を戻す必要はありません。撮影と投稿だけ社内、構成と分析を外部という分け方であれば、担当者の負担は週数時間に収まる例が多いです。逆に、企画から分析まで社内で完結させようとすると、兼務では続きません。
Q. フォロワーは増えたのに売上が変わりません。何を疑えばよいですか?
A. 集まった層と買う層がずれている可能性と、着地先に問題がある可能性の2つです。プロフィールからサイトへ何人遷移しているか、そのうち何人がカートに進んだかまで分けて見ると、SNS側の問題か着地先の問題かが切り分けられます。
まとめ
SNS運用代行の失敗を、代行会社の質だけの問題として片付けると、乗り換えても同じことが起きます。まず、いま起きているのが3つの型のどれなのかを決める。次に、原因が代行側か発注側かを切り分ける。順番はここからです。
手をつける優先順位をひとつ挙げるなら、アカウントの権限確認をいちばん先に置いてください。ここだけは、こじれてからでは動かせなくなります。
そして、やらないほうがよいこともひとつ。腹が立っている段階で解約を告げるのは避けたほうが賢明です。数字の控えと権限の移管を済ませてからでも、伝えるのは遅くありません。
原因が発注側にあったと分かったなら、それは悪い知らせではありません。目的・素材・承認の3つは、代行会社を替えるより早く直せるものだからです。
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