

「契約が終わった途端、それまで作った動画が使えなくなった」「月30万円払っていたのに、投稿が月8本しか出ず、契約書に本数の記載がなかった」――契約でのトラブルは、この2つが代表例です。
結論からお伝えすると、揉める箇所は業務範囲・権利・解約の3つにほぼ集中します。金額の交渉に時間をかける事業者は多いのですが、後で問題になるのはこの3点のほうです。
solezoreでは、契約書を読むときに金額の行を最後に見ることをおすすめしています。金額は交渉で調整できますが、権利の条項は契約後には変えられません。順番を逆にすると、重要な箇所を読み飛ばします。
この記事では、契約書を確認する理由から、業務範囲の書き方、制作物とアカウントの権利、報酬と支払い、契約期間と解約、秘密保持、責任の所在、契約書がない場合の対応までを解説します。契約の内容そのものについては、必要に応じて弁護士など専門家にご相談ください。
SNS運用代行の契約書|なぜ確認が必要か
結論: 口頭の合意は、担当者が変わると消えます。書いていないことは、後から主張できません。
まず前提を押さえます。
担当者は変わる・認識のずれは必ず起きる
契約時に丁寧に説明してくれた担当者が、半年後にはいないことがあります。異動、退職、案件の入れ替え。
新しい担当者は、契約書に書かれていることしか知りません。口頭で合意していた内容は、引き継がれないと考えておきます。
これは相手の誠実さの問題ではなく、組織の構造上の問題です。だから書面が要ります。
同じ言葉でも、想定している中身が違うことがあります。運用代行という言葉ひとつ取っても、含まれる業務は会社によって違います。
契約書に書く作業は、この認識を揃える作業でもあります。書こうとして初めて、双方の理解が違っていたことに気づくことも珍しくありません。
相手を疑うためではない
契約書の確認は、相手を信用していないという意思表示ではありません。双方を守る仕組みです。
良い会社ほど、この確認に協力的です。曖昧なまま進めたがる相手のほうが、後で問題になります。確認を嫌がる反応自体が、判断材料になります。
契約書に入れる内容は、提案書の段階で拾っておきます。提案書は営業の資料で法的な拘束力を持たないため、書いてあった内容が自動的に契約へ反映されることはありません。
業務範囲の書き方
結論: 数字で書かれているかを確認します。適宜、必要に応じてといった表現は、後で解釈が分かれます。
もっともトラブルの多い箇所です。
本数を数字で書く
月に何本の投稿を、どの媒体に出すか。動画と静止画の内訳も含めて、数字で記載します。
適宜投稿する、月数回といった表現では、後から増やす交渉ができません。実際に、月30万円の契約で投稿が月8本だった事例があります。
依頼側は月20本を想定し、依頼先は月8本のつもりだった。数字が書かれていれば防げた食い違いです。
含まれない業務も書く
含まれるものだけを書くと、書いていない業務の扱いが曖昧になります。
コメント対応、撮影、分析の報告。これらが含まれないなら、その旨も明記してもらいます。後で追加費用の交渉になったとき、根拠になります。
報告については、頻度と提出期限に加えて載せる項目まで書いておくと水準が保たれます。決め方はレポートに何を載せさせるかを参照してください。
追加費用の条件
基本料金に含まれない作業と、その料金を明記します。
投稿の本数を月の途中で増やしたとき。撮影の場所を変更したとき。急ぎの投稿を依頼したとき。修正が規定回数を超えたとき。
いずれも運用の中で普通に起きることです。年間で月額の1〜2割に達することもあるため、条件を決めておきます。
確認する項目を一覧にすると、次のようになります。
| 項目 | 確認すること | 曖昧だとどうなるか |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 本数、媒体、動画と静止画の内訳 | 想定の半分しか投稿されない |
| 追加費用 | 含まれない作業と、その料金 | 請求が月額の1〜2割膨らむ |
| 制作物の権利 | 契約終了後も使えるか | 1年分の素材を失う |
| アカウント権限 | 管理者は誰か、終了時の移管 | フォロワーごとアカウントを失う |
| 報酬と支払い | 締めと支払い時期、成果の定義 | 請求時に解釈が食い違う |
| 契約期間 | 最低期間、自動更新の有無 | 意図せず1年延長される |
| 解約 | 通知の方法と期限、引き継ぎ | 解約を伝えた後に対応が滞る |
| 責任の所在 | 投稿内容と素材の権利 | 問題発生時に対応が遅れる |
この8項目に空欄がある契約書は、確認が足りていません。相手に質問して、書き足してもらいます。

制作物とアカウントの権利
結論: 契約終了後に使えるかどうかを確認します。ここが最も見落とされ、最も損失が大きい項目です。
金額より重要な箇所です。
制作物の利用範囲・出演者の肖像
作った画像や動画を、契約終了後も使えるかを確認します。
契約期間中のみの利用と定められていると、終了とともに全部が使えなくなります。1年分の制作物が消えることになり、実際に起きている事例です。
広告への転用、自社サイトへの掲載、印刷物への使用。想定される用途を列挙して、含まれるかを確認します。
社外の出演者を起用した場合、その肖像の利用範囲も決めます。
契約期間中のみ、あるいは撮影から2年間、といった制限が付くことがあります。長く使いたい素材なら、この期間を延ばす交渉をします。
契約書に記載がない場合は、出演者との個別の取り決めがどうなっているかを聞きます。依頼先と出演者の契約内容が、こちらの利用範囲を決めていることがあります。
アカウントの管理権限
これが最も重要です。アカウント自体の管理者が誰になっているかを確認してください。
業者側が作成したアカウントの場合、権限が移らないことがあります。契約終了とともにアカウントを失えば、それまでのフォロワーもすべて消えます。
管理者の権限は自社に置き、依頼先には投稿に必要な権限だけを付与する。この形が安全です。契約書に、終了時の権限移管を明記してもらいます。
報酬と支払いの条件
結論: 金額だけでなく、締めと支払いの時期、成果報酬の定義、途中解約時の扱いを確認します。とくに成果報酬は、対象範囲が曖昧だと請求の段階で解釈が食い違います。
金銭の条項です。
支払いの時期と、成果報酬の定義
月末締めの翌月末払いが一般的です。着手金が必要な場合もあります。
初期費用が別に発生する契約では、その支払い時期も確認します。契約と同時に請求されるのか、初回の納品後か。
売上や獲得件数に対する報酬がある場合、対象範囲を明記します。
SNS経由の売上だけか、同時期の全売上か。計測の方法はどうするか。この定義が曖昧なまま進めると、請求の段階で解釈が食い違います。
計測に使うツールや管理画面も指定します。数字の出どころが違うと、金額も変わります。
月の途中で解約した場合、その月の報酬はどうなるか。日割りか、全額か。
年間契約で前払いしている場合、残りの期間の返金があるかも確認します。返金なしと定められていることも珍しくありません。
契約期間と解約
結論: 最低期間、自動更新の有無、解約の通知期限。この3つを確認します。とくに自動更新は見落とされやすい。
期間の条項です。
最低契約期間と、自動更新の条項
半年や1年が最低という条件も珍しくありません。SNSは立ち上げに3か月ほどかかるため、一定の期間は必要です。
ただし、合わないと分かってから半年続けるのは損失になります。3か月からの契約が可能かを相談します。
試験的な期間を設けて、そこから本契約に移る形を受けてくれる会社もあります。
期間満了の1〜2か月前までに申し出がなければ自動で更新される、という条項が入っていることがあります。
この期限を過ぎると、意図せず1年延長されます。契約時にこの日付を記録し、社内の予定表に入れておきます。
通知の方法と期限を確認します。書面での通知が必要な場合、メールでの連絡だけでは効力が生じないことがあります。
解約後の引き継ぎについても決めておきます。アカウントの権限移管、素材の受け渡し、進行中の制作物の扱い。
これらが決まっていないと、解約の意思を伝えた後に対応が滞ります。
秘密保持と情報の扱い
結論: 商品の情報、顧客の情報、未公開の企画。これらの取り扱いを明記します。範囲を広げすぎると実務が回らなくなるため、制作に必要な情報は扱える形にしておきます。
情報の条項です。
何を秘密とするか・実績としての公開
新商品の情報、価格の方針、顧客のデータ。依頼先に渡す情報のうち、外部に出てほしくないものを定義します。
範囲が広すぎると、実務が回らなくなります。制作に必要な情報まで扱えなくなると、依頼先が動けません。現実的な範囲で決めます。
依頼先が、自社の案件を実績として公開できるかを決めます。
公開してほしくない場合は、その旨を明記してください。逆に、公開を認める場合も、掲載前に内容を確認できる形にしておくと安心です。
数字の公開についても取り決めが要ります。売上や獲得件数を出されたくない場合は、事前に伝えます。
顧客情報の扱い
コメント対応を依頼する場合、依頼先が顧客の個人情報に触れることになります。
取り扱いの範囲、保存の可否、契約終了時の削除。個人情報を扱う契約では、この3点を明記するのが一般的です。
自社の個人情報保護の方針と整合しているかも確認します。
出してよい情報の範囲そのものは、契約書ではなくガイドラインに書きます。契約書からそれを参照する形にして、初めて委託先に守る義務が生まれます。
あわせて決めておきたいのが、アカウントの権限をどう渡すかです。パスワードを渡す運用にしていると、契約が終わってもログインできる状態が残ります。
責任の所在
結論: 投稿の内容による問題が起きたとき、誰が責任を負うかを決めます。曖昧なまま進めると、対応が遅れます。
責任の条項です。
投稿内容の最終責任
法令に触れる表現、事実と異なる記載、第三者の権利の侵害。こうした問題が起きたときの責任の所在を決めます。
一般的には、投稿の最終確認を行った側が責任を負う形になります。確認を依頼先に任せている場合、その旨を明記します。
自社で確認する運用なら、確認の手順と期限も決めておきます。当日の朝に送られても対応できません。
素材の権利侵害・炎上した場合の対応
依頼先が用意した画像や音源が、第三者の権利を侵害していた場合の扱いです。
依頼先が権利処理を行う旨と、問題が生じた場合の対応を明記してもらいます。この確認は、依頼先を守ることにもなります。
誰が判断し、誰が対応するかを決めておきます。担当者が1人で判断して対応が遅れると、被害が広がります。
連絡の経路も決めます。夜間や休日に起きた場合、誰にどう連絡するか。この取り決めがあるだけで、対応の速さが変わります。
契約書がない場合
結論: 個人への依頼などで契約書がない場合も、要点をやりとりの中で文字にして残します。書面でなくても、記録があれば根拠になります。
書面がない場合の対応です。
最低限、文字にする4項目・簡易な業務委託の雛形を使う
- 月に何本、どの媒体か
- 報酬の金額と、支払いの時期
- 制作物とアカウントの権利
- 契約の期間と、終了の手続き
この4つを、メールやチャットで確認する形でも構いません。後から見返せる形になっていることが重要です。
書式が分からない場合、簡易な業務委託契約の雛形を使えば足ります。数枚の文書で構いません。
相手が個人の場合、契約書を作ることに慣れていないことがあります。こちらから雛形を用意すると、話が進みやすくなります。
内容に不安がある場合は、弁護士など専門家に確認してください。特に、権利の条項と責任の条項は、後から変更できません。
途中からでも作れる・依頼先から契約書が出てこない場合
すでに契約が始まっている場合でも、覚書という形で追加できます。
とくにアカウントの権限と制作物の扱いは、早めに文字にしておきます。関係が良好なうちのほうが、話は進みやすくなります。
切り出し方としては、社内の管理体制を整えるためという説明が自然です。相手を疑っているという印象を与えずに済みます。
こちらから雛形を出してください。相手が用意するのを待っていると、いつまでも始まりません。
雛形は、依頼先ごとに作り直す必要はありません。1度作れば次の依頼先でもそのまま使え、変わるのは本数と金額の部分だけです。
あわせて、過去の契約で揉めた項目を追記していきます。3社目あたりから、自社の実態に合った雛形になります。
出てきた契約書が相手に有利な内容だった場合も、修正を求めて構いません。契約書は交渉の出発点であって、決定事項ではありません。
修正を一切受け付けない相手は、その姿勢自体が判断材料になります。契約後の柔軟性も期待できないと考えたほうがよいでしょう。
| 状況 | 取るべき対応 |
|---|---|
| 契約書がない | こちらから雛形を出す |
| 内容が相手に有利 | 修正を求める。特に権利の条項 |
| 修正に応じない | 契約自体を再検討する |
| 途中から整えたい | 覚書として追加する |
solezoreの支援事例|業種別の進め方
結論: solezoreでは契約条件の確認から、社内で管理すべき権限の整理までを支援しています。問題になる箇所は状況によって変わります。
メディア|契約終了で1年分の素材を失った
1年契約が終了した時点で、それまでに制作した動画と画像がすべて使えなくなった事業者です。
契約書を確認すると、制作物の利用は契約期間中に限ると記載されていました。担当者はこの条項を認識しておらず、契約時に金額の交渉だけをしていたそうです。
失ったのは、動画48本と画像200点あまり。制作費に換算すると、300万円を超える資産です。
現在は別の会社と契約し直し、制作物の権利は納品時に移転する形にしています。契約書の確認は金額の行から見ない、という順番をここで学んだと話されていました。
美容|アカウントの権限が移らなかった
依頼先が作成したアカウントで運用していた事業者です。契約終了時に、管理権限の移管を求めたところ対応してもらえませんでした。
契約書に権限の扱いに関する記載がなく、法的な主張も難しい状況でした。フォロワー1万2,000人のアカウントを、事実上失っています。
新しいアカウントを立ち上げ直し、元の水準に戻るまで8か月かかりました。
以降は、自社でアカウントを作成し、依頼先には投稿に必要な権限だけを付与する形にしています。契約書にも、終了時の権限移管を明記しました。
この2つの事例に共通するのは、金額以外の条項を読んでいなかったことです。

よくある質問
Q. 契約書のどこを最初に見ればいいですか?
A. 業務範囲、権利、解約の3つです。金額は交渉で調整できますが、権利の条項は契約後には変えられません。金額の行から読み始めると、重要な箇所を読み飛ばします。
Q. 業務範囲はどう書かれていれば安全ですか?
A. 数字で書かれていることです。月に何本の投稿を、どの媒体に、動画と静止画の内訳を含めて記載してもらってください。適宜、必要に応じてといった表現では、後から増やす交渉ができません。
Q. 制作物は契約終了後も使えますか?
A. 契約書の記載によります。契約期間中のみの利用と定められている場合、終了とともに使えなくなります。1年分の制作物を失った事例もあるため、必ず確認してください。
Q. アカウントの権限はどうすべきですか?
A. 管理者の権限は自社に置き、依頼先には投稿に必要な権限だけを付与してください。業者が作成したアカウントの場合、権限が移らずにフォロワーごと失う事例があります。
Q. 契約書がない場合はどうすればいいですか?
A. 本数、報酬と支払い時期、制作物とアカウントの権利、契約期間と終了の手続き。この4項目をメールやチャットで文字にして残してください。書面でなくても、後から見返せる形なら根拠になります。
Q. 自動更新の条項に注意が必要ですか?
A. 必要です。期間満了の1〜2か月前までに申し出がなければ自動更新される条項が入っていることがあります。この期限を過ぎると意図せず1年延長されるため、契約時に日付を記録して予定表に入れてください。
まとめ
契約書で揉めるのは、業務範囲・権利・解約の3つです。この記事の要点です。
- 口頭の合意は担当者が変わると消える。書いていないことは主張できない
- 業務範囲は数字で書く。適宜といった表現は解釈が分かれる
- 制作物が契約終了後も使えるかを確認する。1年分を失った事例がある
- アカウントの管理者は自社に置く。フォロワーは事業の資産
- 自動更新の条項と、解約の通知期限を記録しておく
- 契約書がない場合も、4項目をやりとりの中で文字にする
補足すると、契約書を丁寧に確認した事業者から後で聞くのは、その過程で業務の設計が明確になったという話です。何を任せ、何を社内に残すかを書き出す作業が、そのまま体制の整理になります。契約書は守りの文書であると同時に、進め方を決める文書でもあります。
なお、契約の内容そのものについては、必要に応じて弁護士など専門家にご相談ください。
代行の費用や選び方については、ピラー記事もあわせてご覧ください。
solezoreでは、契約条件の確認から社内で管理すべき権限の整理までを支援しています。提示された契約書の読み方に迷っている段階でも構いませんので、現状をお聞かせください。
この記事を書いた solezore に相談する
記事に書ききれない具体策・料金・事例は、無料相談で。SNS/EC/SEO の領域別に専門家が対応します。

