

「動画は出しているのに、売上のグラフがまったく動かない」「上からTikTokをやれと言われたが、何をもって成果とすればいいのか分からない」――TikTokについてのご相談は、この2つから始まることがほとんどです。
結論からお伝えすると、TikTokで売上をつくるかどうかを分けるのは、動画の出来ではなく動画から購入までの経路が繋がっているかです。おすすめ表示に乗る動画を作る技術と、見た人が買える場所へ着地させる設計は、別々の仕事だと考えたほうがうまくいきます。
solezoreでは、TikTokを1つの施策ではなく、5つの経路を持つ売り場として設計しています。動画・ライブ・クリエイター・広告・ショップ。どれか1つだけを回しても、成果は出にくいのです。台所に例えるなら、コンロだけあって鍋も皿もない状態に近い。
この記事では、他のSNSとの違いから、おすすめ表示の仕組み、動画の設計、売上をつくる5つの経路、広告とライブの使い方、数字の見方、内製と外注の分かれ目までを、実際に支援している立場から解説します。
TikTokマーケティングとは|他のSNSと何が違うのか
結論: TikTokマーケティングは、商品を探している人に見つけてもらう施策ではなく、探していない人の画面に商品を差し込む施策です。フォロワーではなく動画1本ごとに評価されるため、他のSNSの手順をそのまま持ち込むと成果が出ません。
まず、他のSNSと何が違うのかを整理します。ここを取り違えたまま運用を始めると、3か月分の労力がほぼ丸ごと無駄になります。
探しにくる場所ではなく、流れてくる場所
Amazonや楽天市場、検索エンジンでは、ユーザーは買うものをある程度決めた状態でやってきます。商品名を入れ、複数の店を並べ、価格と評価で選ぶ。この土俵では、後から参入したブランドは価格で勝負するしかなくなります。
TikTokの購買は逆から始まります。ユーザーは何も探していません。流れてきた動画が面白かった、使っている人の手つきが気になった、悩みが自分と同じだった。そこで初めて商品に関心が移ります。
つまり、勝負どころが価格と評価から映像の説得力へ移動する。無名のブランドが動画1本で先行ブランドを追い越す現象が起きるのは、この構造のためです。
「良い商品なら、いずれ見つけてもらえる」と思われがちですが、TikTokではそうなりません。見つけてもらう仕組みが動画そのものだからです。商品ページをどれだけ作り込んでも、動画が月に2本では画面に出る回数が足りません。
フォロワーの数より、動画1本ごとの評価
InstagramやX(旧Twitter)は、フォロワーに向けて配信する構造が基本です。フォロワーが増えるほど、届く人数の下限が上がります。
TikTokは、フォロワー0人のアカウントが投稿した動画でも数万回再生されます。おすすめフィードが動画単位で評価するためです。逆に、フォロワーが3万人いても、反応の悪い動画は数百回で止まります。
この違いは、運用の目標設定に直結します。立ち上げの時期にフォロワー数を目標に置くと、判断を誤りやすい。まず見るべきは、1本あたりの再生数と視聴の残り方です。
フォロワーは、後から働き始める資産です。ライブ配信の集客母数になり、新しい動画の初速を底上げします。ただ、順番としては再生が先で、フォロワーは結果としてついてきます。
向いている商材と、設計に手が要る商材
すべての商材が同じように動くわけではありません。判断の出発点として、相性を整理しておきます。
| 相性 | 商材の特徴 | 具体例 |
|---|---|---|
| 高い | 単価3,000〜10,000円/使う場面が映像で伝わる/繰り返し買う | 化粧品、健康食品、日用品、小型家電 |
| 中程度 | 単価は高いが実演で価値が伝わる/説明に時間が要る | 調理家電、寝具、美容機器 |
| 手が要る | 検討期間が長い/実物の確認が要る/表現に法規制がある | 高額家具、医薬品、受注生産品、不動産 |
単価が低すぎる商材にも注意が要ります。1,000円台の商品は、手数料と送料を引くと利益がほとんど残りません。まとめ買いを前提にした価格設計が要る領域です。
一方、手が要るとされる商材でも、その場で売らない使い方があります。認知だけを取り、指名検索や店舗への来店、資料請求へ繋ぐ設計です。TikTokを売り場ではなく入口として扱う考え方で、不動産や医療、高額サービスではむしろこちらが主流になります。
認知から購買までの4段階|いまどこで止まっているのか
結論: TikTokの成果は、認知・関心・行動・購買の4段階に分かれます。売上が動かないときは、どの段階で人が消えているかを特定してから手を打つと、無駄な作り直しを避けられます。
再生数が伸びない相談と、再生数は伸びているのに売れない相談。この2つはまったく別の問題です。同じ改善策を当てても解決しません。
段階が変わると、見る数字も入れ替わる
段階が変われば、見るべき数字も変わります。全部を同時に追うと、どれも改善しないまま時間が過ぎます。
| 段階 | 見る数字 | 改善の当てどころ |
|---|---|---|
| 認知 | 再生数、リーチ、視聴完了率 | 冒頭3秒、テーマ選び、尺 |
| 関心 | いいね率、コメント数、保存数、シェア数 | 中盤の内容、問いかけ |
| 行動 | プロフィール遷移率、フォロー率、リンクのタップ数 | 締めの一言、プロフィールの文面 |
| 購買 | 注文数、購入率、注文単価 | 商品ページ、価格、レビュー |
支援に入るとき、最初にこの4段階のどこで止まっているかを見ます。認知で止まっているアカウントに商品ページの改善を提案しても、見る人がいないので数字は変わりません。
「10万回再生された動画があるのに、注文が3件しかない」というご相談は毎月のように届きます。この場合、疑うのは動画の質ではありません。
多いのは、動画のテーマと商品がずれている状態です。面白い動画としては成立していても、見た人が自社の顧客ではない。ダンスやネタで数字を伸ばしたアカウントが、商品を出した瞬間に反応が消えるのは典型例です。
次に多いのが、買える場所が遠い状態。プロフィールのリンクを2回タップして、外部サイトに飛んで、そこで会員登録が要る。この3段階で、来た人の大半が消えます。
最後が、商品ページ側の問題です。動画で見た印象と、商品ページの雰囲気が違う。動画は生活の中の映像なのに、ページは白背景の物撮りだけ、というちぐはぐが起きています。
3か月で決まること、6か月で見えること
立ち上げの期間について、現実的な見通しを持っておきます。
最初の1か月は、正解探しの期間です。競合や人気アカウントを20件ほど分析し、伸びている動画の型を3つほど抜き出して、そのまま試します。この段階の再生数に一喜一憂しても意味がありません。
2〜3か月目に、当たる型が1つか2つ見つかります。支援の現場では、ここまでに30〜50本の投稿を出しているケースが多い。本数が判断材料をつくるので、週2本では材料が足りません。
売上として安定するのは4〜6か月目です。半年の計画で始めて、3か月目に一度立ち止まって型を見直す。この進め方が、最も無理がありません。
逆に、3か月で撤退を判断するなら、最低でも週3本を維持した上で判断します。本数が足りないまま「TikTokは合わなかった」と結論を出すのは、まだ検証していない状態で答えを出すのと同じです。

おすすめ表示の仕組みと、動画が広がる条件
結論: TikTokは投稿された動画をまず少人数へ配信し、その反応を見て次の配信量を決めます。最初の数時間で視聴の残り方が悪いと、そこで配信が止まる仕組みです。
ここは技術的な話に見えますが、動画の作り方に直結します。仕組みを知らずに本数だけ増やしても、同じ場所で止まり続けます。
配信は小さく始まり、反応で広がる
投稿された動画は、まず数百人規模のユーザーへ配信されます。その中での反応が良ければ次はより広い層へ、さらに良ければもっと広い層へ、と段階的に広がっていく仕組みです。
この構造だと、最初の数時間が勝負になります。初速で反応が取れなければ、その動画は数百回の再生で静かに止まる。翌日に伸び始めることも稀にありますが、期待して待つ性質のものではありません。
だからこそ、冒頭の3秒が全体を左右します。最後まで作り込んだ動画でも、冒頭で指が動けば中身は誰にも届きません。
TikTok for Business の公式ヘルプでも、動画の冒頭で内容を伝えることが推奨されています。凝った演出よりも、最初の一言で何の話かが分かる構成のほうが結果につながりやすい。
5つの指標は同じ重みで見られていない
評価に使われる指標は、視聴完了率・視聴維持率・いいね率・コメント率・シェア率の5つが中心です。ただし、5つが同じ重みではありません。
運用の実感として強く働くのは、視聴完了率とシェア率です。最後まで見られた動画と、誰かに送られた動画。この2つは、次の配信量を大きく押し上げます。
指標ごとに、打ち手も変わります。
- 視聴完了率:尺を短くする。20秒の動画は40秒の動画より最後まで見られます
- 視聴維持率:中盤で場面を切り替える。同じ画が5秒続くと指が動きます
- いいね率:共感できるテーマを選ぶ。ノウハウより、あるあるのほうが押されます
- コメント率は、あえて言い切らない部分を残すと上がります。完璧な説明はコメントを呼びません
- シェア率:誰かに教えたくなる情報を入れる。保存とシェアは別の行動です
いいねを増やす施策と、シェアを増やす施策は別物です。どの指標が弱いかを見てから手を打つほうが、闇雲に作り直すより速い。
再生数が急に落ちたときに疑う順番
昨日まで1万回再生されていたのに、今日は300回で止まる。この状態になると、多くの方がシャドウバンを疑います。
ただ、順番があります。まず疑うのは投稿内容の変化です。テーマを変えた、尺を変えた、話し方を変えた。心当たりがあれば、そこが原因である可能性が高い。
次に、投稿の頻度と時間帯。1日に5本以上まとめて投稿すると、1本あたりの配信が薄くなることがあります。
3番目に、規約に触れる表現。効能を断定する言い回し、他社の商標、映り込んだ第三者。ここは心当たりが自分では気づきにくい部分です。
シャドウバンを疑うのは、この3つを潰してからで十分です。支援の現場で相談を受けるケースの多くは、運用側の変化で説明がつきます。
動画の設計|1本の中身と、月に何本出すか
結論: 動画は、教育・共感・商品紹介の3タイプを配分して回します。1本の中は4つのパートに割り、音を消した状態でも内容が伝わる作りにすると、視聴の残り方が安定します。
ここからは実制作の話です。動画の作り方を型として持てるかどうかで、続けられるかが決まります。
3つのタイプを配分する
投稿する動画は、目的別に3つに分けられます。
教育系は、使い方や選び方を伝える動画です。信頼を積む役割を持ち、保存されやすい。共感系は、あるあるやトレンドに乗る動画で、新しい人に届く役割を持ちます。商品紹介系は、使用シーンや前後の変化を見せて、買う理由をつくります。
この3つを、おおよそ5対3対2で配分すると回りやすい。商品紹介ばかりだと広告に見えて伸びず、共感系ばかりだと売上に繋がりません。
配分は固定ではありません。立ち上げ期は共感系を多めにして人を集め、フォロワーが数千人を超えたあたりから商品紹介の比率を上げる。この移行がうまい会社は、売上の立ち上がりが速い。
1本を4つのパートに割る
1本の動画は、次の4つに分けて設計します。
- 冒頭(0〜3秒):結論、驚き、問いかけのいずれかを置く
- 本編(3〜20秒):1本で伝えることは1つに絞る
- 証拠(場面に応じて):使用シーン、前後の比較、実際の手つき
- 締め(最後の数秒):次の行動を一言添える
つまずくのは冒頭です。「今日は◯◯についてご紹介します」で始まる動画は、そこで大半が消えます。挨拶も自己紹介も、TikTokでは冒頭に置きません。
締めについては、毎回入れる必要はありません。ただ、商品紹介の動画では省かないほうがいい。買い方が分からないまま画面が終わると、興味を持った人が行き場を失います。
音を消して見られる前提で作る
TikTokは、音を出さずに視聴されている割合が高いプラットフォームです。電車の中、職場の休憩時間、寝る前の布団の中。音を出せない場面で見られています。
だから、字幕は必須です。話している内容を全部載せる必要はありませんが、要点は文字で追える状態にします。
文字の大きさにも注意が要ります。スマートフォンの画面で読める大きさか、実機で確認する。パソコンの編集画面では読めても、手のひらの上では小さすぎることがよくあります。
音源は、流行している曲を使うとその音源の枠に乗りやすくなる利点があります。ただし、商用利用の可否は確認が要ります。企業アカウントで使える音源は、個人アカウントより範囲が狭いためです。
撮影を1日にまとめる
続けられるかどうかは、撮影の段取りで決まります。1本ずつ撮っていると、担当者の負担が重すぎて2か月で止まります。
現実的なのは、月に1〜2回の撮影日を決めて、その日に10〜20本分の素材を撮る形です。衣装を変え、場所を変え、まとめて撮る。編集と投稿は別の日に回します。
支援先では、半日の撮影で3週間分の素材が確保できています。撮影の準備に時間がかかるので、まとめたほうが1本あたりの手間は確実に下がります。
台本は、撮影の前日までに全部書いておきます。現場で考え始めると、その日の本数が半分になります。
売上をつくる5つの経路
結論: TikTokで売上をつくる経路は、自社動画・ショップ・ライブ・クリエイター・広告の5つです。どれか1つで完結させようとせず、2つ以上を組み合わせたときに初めて数字が動きます。
ここが、この記事で最も伝えたい部分です。TikTokを施策としてではなく、5つの経路を持つ売り場として捉え直します。
経路1|自社アカウントの動画
土台になる経路です。自社で撮り、自社で投稿する。費用は人件費だけで、続ければ続けるほど素材が資産として貯まります。
弱点は、立ち上がりが遅いこと。最初の1〜2か月はほとんど反応がありません。ここで止める会社が本当に多い。
この経路だけで売上をつくろうとすると、半年から1年かかります。他の経路と組み合わせる前提で考えたほうが現実的です。
経路2|TikTok Shop
アプリの中で商品の発見から決済まで完結する販売機能です。動画の下に出る商品リンクをタップして、そのまま購入まで進めます。
外部サイトへ飛ばす形と比べて、途中で消える人が圧倒的に少ない。動画を見てから買うまでの距離が短いほど、購入率は上がります。
日本ではまだ出店ブランドが少なく、カテゴリによっては競合がほとんどいない状態で棚を取れます。一方で、買い手側にもTikTokで買う習慣が根づいていないため、安心材料の提示が売上を左右します。
経路3|ライブ配信
配信しながら商品を紹介し、その場で買ってもらう経路です。視聴者の質問にその場で答えられるため、購入までの迷いが減ります。
通常の動画経由の購入率が0.5〜1%程度なのに対し、ライブ経由では数%に達することがあります。ただし、配信する人のトークと商品理解に大きく左右される経路でもあります。
配信は最低でも週1回、1回60分以上が目安です。月に1回では、視聴者に配信の時間が定着しません。
経路4|クリエイターの起用
自社では届かない層へ、クリエイターの動画で届ける経路です。フォロワー数より、商材との相性とコメント欄の温度を見て選びます。
10万人のクリエイター1人に依頼するより、1万人規模を5〜10人に依頼したほうが結果が良いことが多い。届く人数は同じでも、小規模なアカウントのほうがフォロワーとの距離が近く、実際の購入に繋がりやすいためです。
1人だけに依存すると、その人の投稿が止まった月に売上が消えます。複数人で回す設計にしておきます。
経路5|広告
作った動画に予算をつけて配信量を買う経路です。オーガニックで反応の良かった動画を広告に転用する形(Spark Ads)が、費用対効果の面では現実的です。
新規に広告用の動画を作るより、すでに反応が取れている動画を使ったほうが、広告らしさが薄く、視聴の残り方も良くなります。
この5つのうち、最初に手を出すべきなのは経路1と2です。土台と受け皿がないまま広告やクリエイターに予算を投じても、集めた人が買う場所にたどり着けません。
広告の使い方と予算の組み方
結論: TikTok広告は、認知を広げるメニューと購入を取るメニューで役割が分かれます。まずはオーガニックで反応の良かった動画を少額で配信し、勝ちパターンが見えてから予算を寄せる進め方が失敗しにくい形です。
広告は魔法の道具ではありません。売れる動画の配信量を増やす道具です。
メニューごとの役割・いくらから始めるか
主なメニューと、使いどころを整理します。
| メニュー | 役割 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| インフィード広告 | おすすめフィードに自然に混ぜる | 通常の集客・購入獲得 |
| Spark Ads | 既存の投稿をそのまま広告配信 | 反応の良い動画を伸ばす |
| TopView・起動画面 | アプリ起動時に大きく表示 | 大型キャンペーンの認知 |
| ブランドエフェクト | 参加型の演出を作る | 話題づくり、利用者投稿の誘発 |
中小企業が最初に使うのは、インフィード広告とSpark Adsの2つで足ります。起動画面やエフェクトは予算規模が大きく、認知の一斉投下が目的の施策です。
現実的な始め方は、月20万〜30万円です。この規模なら、動画を3〜5本同時に配信して比較できます。
1本だけに予算を集中させると、その動画が外れたときに判断材料が残りません。同時に複数を走らせて、反応の良いものへ後から寄せる。この進め方が基本です。
配信を始めたら、1週間ほどは数字が安定するのを待ちます。初日の数字で判断すると、たいてい間違えます。
動画は3〜4週間で飽きられます。同じ動画を配信し続けると、同じ人に何度も表示されて反応が落ちる。差し替える前提で、常に次の素材を用意しておきます。
ライブ配信の組み立て
結論: ライブ配信は、商品説明の時間ではなく、視聴者が出入りする60分をどう設計するかの勝負です。同じ説明を繰り返す前提で構成を組むと、途中から入った人も買えるようになります。
ライブは、始めるハードルが高く見える割に、続けたときの効果が大きい経路です。
台本は商品説明ではなく時間の設計
ライブの視聴者は、最初から最後まで見ているわけではありません。次々に入ってきて、数分で出ていきます。
だから、商品説明を1回だけ丁寧にやると、その数分にいた人にしか届きません。同じ説明を15分ごとに繰り返す構成にします。
購入方法の案内も同じです。どこをタップすれば買えるのかを、1周ごとに毎回入れる。支援先では、この案内を毎周入れるようにしただけで注文数が大きく変わりました。
続けられる体制をつくる
ライブの失敗の多くは、配信内容ではなく体制で起きます。担当者1人に任せると、その人が休んだ日に配信が止まります。
必要な役割は3つです。話す人、コメントを拾う人、商品と在庫を管理する人。2人でも回りますが、1人だと画面外の作業が回りません。
配信の時間帯は固定します。毎週火曜の20時、というように決めて、プロフィールにも書いておく。時間が動くと、常連がつきません。
クリエイター起用とキャスティング
結論: クリエイター起用は、フォロワー数ではなくコメント欄の温度と商材との相性で選びます。1人に大きく賭けるより、複数人に分散したほうが結果の振れ幅が小さくなります。
自社アカウントだけでは、届く層に限りがあります。そこを補う経路です。
人数と規模の考え方
フォロワー1万人規模のクリエイターを5〜10人。これが、最初の設計として最も扱いやすい形です。
大型のクリエイター1人に依頼すると、その1本が外れたときに何も残りません。複数人に分けると、当たった型が分かり、次の選定に活かせます。
見るべきは、フォロワー数よりコメントの中身です。「かわいい」だけが並ぶアカウントと、商品への質問が並ぶアカウントでは、購入に繋がる度合いがまったく違います。
依頼の前に決めておくこと
依頼の前に決めておくと、後で揉めにくくなる項目があります。
投稿の本数と時期、二次利用の範囲、報酬の形(固定か成果連動か)、そして使ってほしくない表現。とくに二次利用の範囲は見落とされがちです。広告に転用したいなら、依頼の時点で契約に入れておきます。
化粧品や健康食品では、使える表現の一覧を先に渡します。外部のクリエイターに法規制の知識を求めるのは無理があります。ここを渡さずに任せると、公開後に修正依頼をすることになり、双方が消耗します。
アカウントの初期設定と、運用のルール
結論: アカウントは開設の時点で、名前・プロフィール文・遷移先の3つを決めておきます。後から変えると、それまでに積んだ検索での見つかりやすさが一度リセットされます。
地味な部分ですが、後から直すのが面倒な領域です。
開設のときに決める3つ
まず、アカウント名。ブランド名をそのまま入れます。検索されたときに見つからないアカウントは、動画が伸びても指名検索に繋がりません。
次に、プロフィール文。何のアカウントかを1行で書きます。動画を見て気になった人が最初に見る場所なので、ここが空欄だとフォローされません。
3つ目が、遷移先です。自社サイト、TikTok Shop、公式LINE。どこへ送るのかを最初に決めます。ここが決まっていないアカウントは、動画が伸びたときに受け皿がありません。
ビジネスアカウントへの切り替えも、開設時に済ませます。分析画面が使えるようになり、広告も配信できるようになります。
アカウントを分けるかどうかの判断
ブランドが複数ある場合、アカウントを分けるかで迷います。判断の基準は、視聴者層が重なるかどうかです。
同じ顧客層に向けたブランドなら、1つのアカウントにまとめたほうが伸びます。動画の本数が集まり、初速が安定するためです。
顧客層が違うなら分けます。10代向けと50代向けの動画が同じアカウントから出ると、おすすめ表示の精度が下がり、どちらの層にも届きにくくなります。
ただ、分けた分だけ運用の手間は倍になります。担当者が1人なら、まとめる判断のほうが現実的です。
数字の見方と、改善のまわし方
結論: 最初に見る数字は、視聴完了率・プロフィール遷移率・注文数の3つです。この3つで、認知・関心・購買のどこが弱いかが判別できます。数字は週に1回まとめて見ます。
毎日数字を見ても、判断できるほどの差は出ません。むしろ、日々の増減に振り回されます。
最初に見る3つの数字
視聴完了率は、動画そのものの評価です。ここが低ければ、冒頭か尺に原因があります。
プロフィール遷移率は、動画を見た人がどれだけ興味を持ったかを示します。再生数が多いのにここが低い動画は、面白いけれど商品と関係のない動画です。
注文数は結果です。前の2つが良くて注文が動かないなら、商品ページか価格を見ます。
この3つ以外の数字は、最初は見なくて構いません。指標を増やすほど、判断が遅くなります。
週に1回の振り返りでやること
週に1回、上位3本と下位3本を並べます。並べたら、テーマ・冒頭の言い回し・尺・投稿時間の4点で違いを探します。
見つかった違いは、言葉にして残します。「調理の手元から始めた動画は最後まで見られる」「価格の話を冒頭に置くと伸びない」。この積み重ねが、自社の型になります。
変える点は、1回に1つだけにします。冒頭と尺とテーマを同時に変えると、何が結果を動かしたのか分からなくなります。
分析画面の数字は、投稿から48時間ほど経ってから確認します。直後の数字は、まだ配信が広がる途中の値です。
体制と費用|内製と外注の分かれ目
結論: 内製と外注の分かれ目は、社内に撮影と編集ができる人がいるかどうかです。企画と商品知識は社内に残し、技術と手間の部分だけを外に出す形が、費用と成果の両面で無理がありません。
すべてを内製すると人が足りず、すべてを外注すると商品を知らない人が動画を作ることになります。
判断の目安
社内に動画を作れる人がいて、その人が週に10時間ほど使えるなら、内製で始められます。ここが確保できないなら、外注を検討する段階です。
ただし、外注しても社内の工数はゼロになりません。窓口として月に数時間は必要です。商品情報の提供と確認への返答が滞ると、外注先が動けなくなります。
「外注すれば全部やってもらえる」と思われがちですが、実際には商品を一番知っているのは社内の人です。企画の判断を丸ごと外に出すと、実態と合わない動画が出てきます。
費用の目安
依頼の範囲によって、費用は大きく変わります。
| 依頼の範囲 | 費用の目安 | 含まれるもの |
|---|---|---|
| 編集だけ | 月8万〜15万円 | 素材は自社で撮影、編集と字幕のみ |
| 制作代行 | 月20万〜40万円 | 企画・撮影・編集で月8〜16本 |
| 運用代行 | 月40万〜80万円 | 制作に加えて投稿管理・分析・改善 |
| 広告運用 | 広告費の20%前後 | 配信設定・改善(広告費は別途) |
比較のときは、動画1本あたりの単価に換算します。月30万円で20本なら1本1万5,000円、月20万円で8本なら1本2万5,000円。総額が安いほうが、単価では高いこともあります。
3か月だけ運用全体を委託し、その間に手順を社内へ移す形もあります。支援先では、4か月目から内製に切り替えて月額が大きく下がった例があります。教わる期間として使う委託は、費用対効果が高くなりやすい。
solezoreの支援事例|業種別の進め方
結論: solezoreでは、アカウントの設計から動画制作、ライブ配信、クリエイター起用、ショップ連携までを支援しています。同じTikTokでも、業種によって最初に打つ手はまったく変わります。
アパレル|投稿は出ていたが、フォロワーが買い物客ではなかった
「毎日投稿して1年、フォロワーは2万人。でも売上が動きません」というのが相談の中身でした。
動画を見ると、原因はすぐに分かりました。伸びていたのはスタッフの日常やダンスの動画で、商品が映っていません。集まっていたのは、ブランドではなくスタッフのファンでした。
商品を主役にした動画へ切り替えるにあたり、いきなり全部は変えませんでした。既存の型を半分残しつつ、着用シーンの動画を週2本ずつ足していく形です。急に商品ばかりにすると、既存のフォロワーが離れます。
3か月で、着用動画からの遷移が日常動画の6倍になりました。フォロワーの伸びは鈍りましたが、注文は増えています。
飲食|半径5キロに届けばよかった
ご相談をいただいたのは店舗を3つ持つ飲食チェーンです。全国に届く必要はなく、近隣に住む人に知ってもらえれば足りる。
この場合、再生数を目標にすると判断を誤ります。5万回再生されても、そのうち近隣の人が100人なら意味がありません。
位置情報を入れた投稿と、店内の様子が伝わる動画に絞りました。調理の手元、常連客とのやりとり、開店前の仕込み。派手さはありませんが、来店に繋がる内容です。
2か月目から、動画を見たという来店客が出始めました。担当者が「投稿を見ました、と言われるのが増えた」と話していたのが印象に残っています。
日用品・家電|ライブを始めたが、視聴者が集まらなかった
ライブを月2回やっているのに、同時視聴が10人前後から動かないという状態でした。
原因は集客でした。ライブの告知が当日の投稿だけで、前後の動画も出ていません。ライブは、配信の外側で人を集めておかないと人が来ない仕組みです。
配信の前3日間に予告の動画を出し、配信後は切り抜きを4本流す形に変えました。配信の時間も毎週火曜の21時に固定しています。
3か月で同時視聴が10倍を超えました。切り抜きから商品ページへ来る人も増え、配信していない日の注文が立つようになっています。

よくある質問
Q. TikTokを始めるのに、いくらくらい必要ですか?
A. 自社で撮影と編集をするなら、機材とソフトで初期10万円ほど、あとは人件費です。外注する場合は、編集だけなら月8万〜15万円、制作から任せるなら月20万〜40万円が目安になります。広告を並行するなら、別に月20万円前後を見込みます。
Q. 週に何本くらい投稿すればいいですか?
A. 週3〜5本が目安です。週2本以下だと、当たる型を見つけるまでに時間がかかりすぎます。ただし、無理な本数を設定して2か月で止まるより、続けられる本数で半年回すほうが結果は出ます。
Q. フォロワーが少ないうちは売れないのでしょうか?
A. そんなことはありません。TikTokは動画単位で評価されるため、フォロワー数百人のアカウントの動画が数万回再生されることも普通にあります。ただし、ライブ配信はフォロワーが集客の母数になるので、こちらはフォロワー数が結果に影響します。
Q. InstagramとTikTokは、どちらを先にやるべきですか?
A. 新しい顧客に出会いたいならTikTok、すでに知っている人との関係を深めたいならInstagramです。両方やる場合も、同じ動画を出すだけで構いません。まず動画が作れる体制をつくることのほうが先です。
Q. 動画がまったく伸びないのですが、何を直せばいいですか?
A. 冒頭3秒と尺から見てください。「今日は◯◯をご紹介します」で始まっていないか、40秒を超えていないか。この2つで改善するケースが多くあります。それでも動かないなら、テーマそのものが視聴者の関心とずれている可能性があります。
Q. 成果が出るまでどのくらいかかりますか?
A. 当たる型が見つかるまでが2〜3か月、売上として安定するまでが4〜6か月というのが実際のところです。半年の計画で始めて、3か月目に一度立ち止まって型を見直す進め方をおすすめしています。
Q. 途中から外注に切り替えることはできますか?
A. できます。逆に、外注から内製へ移すこともできます。3か月だけ運用全体を委託して手順を社内に記録し、4か月目から自社で回す形は、費用を抑えながら立ち上げる方法として現実的です。
まとめ
TikTokマーケティングの要点を整理します。
- 探している人ではなく、探していない人に届ける施策。フォロワーより動画1本ごとの評価で決まる
- 認知・関心・行動・購買の4段階のうち、どこで止まっているかを特定してから手を打つ
- 動画は3タイプを配分し、1本を4パートで設計する。撮影は1日にまとめる
- 売上をつくる経路は5つ。自社動画とショップを土台にして、ライブ・クリエイター・広告を足す
- 数字は週に1回、上位3本と下位3本を比べる。変える点は1回に1つ
- 企画と商品知識は社内に残し、撮影と編集は外に出しやすい
最後に、本文で触れなかった点を1つ。始めるときに決めるべきは、いつやめるかの基準です。
週3本を6か月続けて、視聴完了率もプロフィール遷移も動かないなら、商材とTikTokの相性を疑う段階に来ています。その場合も、撤退ではなく使い方を変える選択があります。売り場としてではなく、認知の入口として使い、購入は別の販路で取る形です。
始める前にこの基準を決めておくと、3か月目の停滞期に慌てずに済みます。
solezoreでは、アカウントの設計から動画制作、ライブ配信、クリエイター起用、TikTok Shopとの連携までを支援しています。いまどの段階で止まっているのかの整理からでも構いませんので、現状をお聞かせください。
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