自治体のSNS活用で住民を動かす|成功事例と運用設計のポイント

自治体のSNS活用で住民を動かす|成功事例と運用設計のポイント SNS運用
2方向を指す、何も書かれていない木の道標
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「イベントの告知を出しているが、参加者が増えた実感がない」「アカウントは開設したものの、担当が異動してから更新が止まっている」――自治体のご相談は、この2つが典型です。

結論からお伝えすると、自治体のSNSで情報が届かない原因の多くは誰に向けた発信かが定まっていないことにあります。全住民に向けた告知は、結果として誰にも届きません。

solezoreでは、自治体のSNSを広報紙の補完だと考えています。広報紙は全世帯に届きますが、読まれる保証はありません。読まれない層に、別の経路で届けるのがSNSの役割です。

この記事では、SNSが必要とされる理由から、目的の絞り方、発信する内容、媒体の使い分け、届かない原因、災害時の運用、炎上を防ぐ体制、継続の仕組みまでを解説します。

民間の運用と、自治体の運用でちがうこと
民間
売上につなげる
尖った表現も取れる
担当の裁量が大きい
失敗は自社の範囲
自治体
届けることが目的
表現に慎重さが要る
承認の流れがある
失敗が議会や報道に及ぶ

自治体でSNSが必要とされる理由

結論: 広報紙や回覧板が届かない層に、別の経路で情報を届けられる点に価値があります。とくに転入者と若年層への到達が課題になります。

まず構造を押さえます。

従来の経路が届かない層

広報紙は全世帯に配布されますが、読まれるとは限りません。集合住宅や単身世帯では、そもそも受け取っていないこともあります。

転入したばかりの人は、地域の仕組みを知りません。ごみの出し方、健診の案内、子育ての支援。この情報が届かないまま生活が始まります。

SNSは、この層に届く経路になります。転入前から情報に触れられる点も、従来の経路にはない特性です。

双方向のやりとりができる・移住や関係人口の獲得

広報紙は一方通行です。疑問があっても、問い合わせるには電話や窓口が必要になります。

SNSでは、コメントや返信でやりとりができます。1人の質問への回答が、同じ疑問を持つ他の人にも届きます。

ただし、この双方向性は負担にもなります。対応の方針を決めずに始めると、職員の業務が圧迫されます。

住民向けだけでなく、地域外への発信という役割もあります。移住の検討、観光の誘致、ふるさと納税。

この場合、届ける相手も内容もまったく変わります。住民向けと地域外向けを1つのアカウントで混ぜると、どちらにも届きません。

目的を絞る

目的は1つに絞る
01
生活に必要な情報を届ける
最も基本。災害時はここだけになる
02
事業やイベントを知らせる
参加者を増やす
03
地域の魅力を伝える
移住・観光。効果が出るまで時間がかかる

結論: 住民への告知、移住の促進、観光の誘致。この3つは別の施策です。1つのアカウントで全部をやると、内容がぼやけます。

設計の出発点です。

3つの目的を分ける・優先順位をつける

目的届ける相手主な内容
住民への告知域内の住民手続き、イベント、健診、防災
移住の促進域外の検討層暮らし、住環境、支援制度、仕事
観光の誘致域外の旅行者見どころ、季節の情報、アクセス

この3つは、届ける相手が違います。同じアカウントで混ぜると、住民には観光の情報が、移住検討者には手続きの告知が流れます。

アカウントを分けるのが理想ですが、運用の負担が増えます。分けられない場合は、投稿の比率を決めて偏りを防ぎます。

すべてを同時にやろうとすると、どれも中途半端になります。まず1つに絞ります。

判断の材料は、既存の経路で足りていないものです。住民への告知が広報紙で足りているなら、移住や観光に力を入れる。転入者への情報が届いていないなら、住民向けを優先する。

部署をまたぐ調整

自治体のSNSは、部署ごとに投稿の依頼が集まります。この調整をしないと、内容がばらばらになります。

窓口を1つにして、投稿の判断をする人を決めます。各部署からの依頼を受け付け、優先順位をつけて出す形にします。

依頼のたびに全部を出すと、投稿が告知の羅列になります。住民から見て、読む理由のないアカウントになってしまいます。

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発信する内容

出す内容の優先順位
1
締切のあるもの
申請・受付。逃すと住民が損をする
2
生活に直結するもの
工事・交通・健康
3
事業とイベント
参加を促すもの
4
地域の話題
余力があれば

結論: 告知だけを並べると読まれません。生活に役立つ情報を混ぜると、日常的に見てもらえるようになります。

投稿の中身です。

4つの型・告知は繰り返す

  1. 手続きの案内:期限、必要なもの、窓口の場所
  2. 生活の情報:ごみの分別、健診、子育ての支援
  3. 地域の話題:施設の様子、季節の風景、住民の活動
  4. 防災の情報:平時の備え、災害時の連絡

このうち、2番目が読まれます。困ったときに調べる情報だからです。過去の投稿が検索から見つけられる形になっていると、長く役立ちます。

1回の投稿では届きません。締切のある手続きは、複数回に分けて出します。

1か月前、2週間前、3日前。この3回に分けると、いずれかで目に入ります。同じ内容でも問題ありません。

見ている人は毎回違います。繰り返しに気づくのは、担当者だけです。

分かりやすく書く

行政の文書をそのまま転載すると、読まれません。専門用語や制度の名称が並ぶためです。

誰が、いつまでに、何をすればいいか。この3点を最初に書きます。詳しい説明は、その後か、リンク先に置きます。

対象者を明示すると、自分に関係あるかがすぐ分かります。65歳以上の方へ、小学生のお子さまがいる世帯へ。この一言があると届き方が変わります。

媒体の使い分け

誰に届けたいかで媒体が変わる
誰に届けるか
幅広い年代
LINE。届く確率が最も高い
子育て世代
Instagram。写真で伝わる
若年層
TikTok。移住と観光の入口
緊急時
X。速報性が要る場面

結論: 即時性の高い情報と、長く見られる情報で媒体を分けます。全媒体に同じ内容を出す必要はありません。

媒体ごとの整理です。

媒体ごとの役割

  • X:即時性の高い情報。災害、交通、施設の休館
  • Instagram:地域の風景、イベントの様子、移住の情報
  • LINE:住民への直接の通知。手続きの案内、防災
  • YouTube:議会の中継、制度の解説、地域の紹介

このうち、LINEは住民への到達率が高い経路です。友だち登録した人に直接届くため、告知の確実性が上がります。

媒体を増やしすぎない・使わない媒体は閉じる

担当者の人数に対して媒体が多すぎると、どれも更新が滞ります。

2媒体から始めるのが現実的です。即時性の高い媒体と、蓄積される媒体を1つずつ。慣れてから追加を検討します。

開設したまま更新が止まっているアカウントは、閉じるか、その旨を明記します。

住民から見ると、更新のないアカウントは信頼を損ないます。災害時に確認して情報がないと、次から見られなくなります。

届かない3つの原因

届かない3つ
01
言葉が硬い
制度の名前だけでは、自分に関係あると気づかれない
02
締切に間に合っていない
直前に1回では届かない
03
媒体が合っていない
届けたい相手が見ていない場所に出している

結論: 対象が広すぎる、告知の羅列になっている、検索されない書き方。この3つが届かない原因です。

改善の順番です。

原因1|対象が広すぎる・原因2|告知の羅列になっている

全住民に向けた投稿は、誰にも自分ごとになりません。

対象を明示してください。子育て世帯へ、高齢の方へ、転入された方へ。関係のない人は読み飛ばしますが、当てはまる人には届きます。

投稿ごとに対象を変えれば、全体としては全住民をカバーできます。1本の投稿で全員に届けようとしないことが要点です。

イベントと手続きの告知だけが並ぶと、日常的に見る理由がありません。

生活に役立つ情報も混ぜます。ごみの分別、健診の受け方、施設の使い方。困ったときに調べられる情報が蓄積されると、日常的に見られるようになります。

比率としては、告知が6割、生活の情報が4割ほどが目安です。

住民は、困ったときに検索します。ごみ 分別 ◯◯市、といった形です。

投稿に、検索されそうな語を入れておきます。制度の正式名称だけでなく、住民が使う言葉も併記します。

過去の投稿が見つけられる形になっていると、1年前の投稿が今日の役に立ちます。

災害時の運用

平時に決めておくこと
1
誰が出すか決める
発災時に承認を待てない
2
出す内容の型を作る
避難所・給水・通行止め。定型を用意しておく
3
更新の頻度を決める
情報が無くても、無いことを知らせる
4
訓練で1度出してみる
使い方を知らない人が担当になると止まる

結論: 平時のうちに、誰が何を出すかを決めておきます。発生してから決めると、初動が遅れます。

もっとも重要な用途です。

事前に決めておくこと・情報がないことも伝える

  • 誰が投稿するか(複数名の担当と、その連絡経路)
  • 何を出すか(避難情報、被害の状況、開設した避難所)
  • 出す頻度(進展がなくても定期的に出す)
  • 平時の投稿を止める判断

4番目が見落とされやすい。災害の最中に、イベントの告知が予約投稿で流れると批判を招きます。予約を止める手順を決めておきます。

進展がない場合も、その旨を出します。何も出ないと、確認する側は不安になります。

現在の状況に変化はありません、次回の更新は◯時頃です。この一言があるだけで、住民は安心できます。

あわせて、次の更新をいつ出すかも書きます。1時間おきなのか、状況が変わり次第なのかが分かっていると、住民は画面を見続けずに済みます。

担当者の側にも利点があります。更新の間隔を先に宣言しておくと、その間は問い合わせが減り、確認と対応そのものに時間を回せます。

平時の運用が土台になり、訓練と併用で補う

災害時だけ使おうとしても、住民はそのアカウントを知りません。平時から見られている状態を作っておくことが、災害時の到達につながります。

防災の情報は、平時から月1本ほど出します。備蓄の確認、避難経路の見直し、ハザードマップの案内。

年に1〜2回、災害時の投稿を実際に出す訓練をします。訓練であることを明記したうえで、手順どおりに動きます。

やってみると、想定していなかった詰まりが見つかります。担当者が休みだった、投稿の権限がなかった、書式が決まっていなかった。

本番で気づくより、訓練で見つけるほうがはるかに安全です。防災訓練の一環として組み込むと、実施しやすくなります。

SNSだけに頼る形は避けます。防災無線、緊急速報、自治体のサイト。複数の経路で同じ情報を出します。

通信が途絶えた場合、SNSは届きません。逆に、屋内では防災無線が聞こえないこともあります。それぞれの弱点を補い合う形で設計します。

炎上を防ぐ体制

事前に決めておくことと、その場で判断すること
事前に決める
出さない話題
承認する人
予約投稿の確認手順
誤投稿時の対応
その場で判断
世の中の空気に合うか
時期をずらすか
表現を和らげるか

結論: 判断の基準を先に決め、1人で投稿を判断しない形にします。自治体は批判が集まりやすい立場にあります。

守りの設計です。

投稿前の確認と、触れない話題を決めておく

投稿の内容は、1人で判断しない形にします。担当者以外に、必ず1名が確認する手順にします。

確認するのは、誤字や事実の誤りだけではありません。誤解を招く表現、特定の層への配慮、時期として適切か。この3点を見ます。

政治的な主張、特定の団体への支持、職員個人の意見。これらは公式のアカウントでは扱いません。

判断に迷う内容は、出さない選択もあります。出さなかったことで問題になることは、出して問題になることに比べれば少ない。

批判が集まった場合、その場で反論しないでください。公開の場で争うと、状況が悪化します。

事実確認をしたうえで、何が起きて何を変えたかを伝えます。対応の判断は組織として行い、担当者個人に背負わせない体制にします。

連絡の経路も平時に決めておきます。夜間や休日に起きた場合、誰にどう連絡するか。

続けるための仕組み

結論: 担当者の異動で止まるのが最大の課題です。判断の基準を文書にして、引き継げる形にしておく必要があります。

継続の設計です。

文書に残す・複数名で回す

残すのは4点です。目的と対象、投稿の型、判断の基準、触れない話題。

A4で3枚ほどにまとまります。この文書があるかどうかで、異動時の落ち込み方がまったく違います。

過去の投稿の一覧と、反応の記録も残します。何が読まれたかが分かると、次の担当者が迷いません。

1人に依存すると、その人が異動した時点で止まります。最低2名で担当します。

投稿を作る人と、確認する人。この2名がいれば、片方が不在でも動きます。

素材を集める仕組み・外部への委託

各部署から素材が上がってくる形にします。担当者が取材に回ると、時間が足りません。

共有のフォルダを1つ用意し、イベントや現場の写真を入れてもらう。この程度の仕組みで十分です。

写真を撮る際の注意点も、あわせて共有してください。住民が写り込む場合の配慮、個人が特定される情報の扱い。この2点を伝えておくと、使えない素材が減ります。

職員の負担が大きい場合、制作を外部に委託する選択もあります。ただし、判断は庁内に残します。

何を出すか、どう表現するかは行政の判断が要ります。外部に丸ごと任せると、実態と合わない発信になります。

委託の範囲は、撮影、編集、投稿の作業に限るのが現実的です。企画と確認は庁内で行う分担が現実的です。

業務庁内に残すか理由
目的と対象の設定残す行政の方針と切り離せない
投稿の企画残す制度や事業の理解が要る
撮影・編集外に出せる技術と時間の差が大きい
投稿前の確認残す表現の判断は行政の責任
投稿の作業外に出せる判断を伴わない作業
コメントへの対応残す回答の正確さが求められる

solezoreの支援事例|進め方の違い

結論: solezoreでは自治体の発信設計から投稿の型づくり、引き継ぎ資料の整備までを支援しています。規模によって課題が変わります。

人口5万人規模の市|告知の羅列から生活情報に変えた

投稿は週5本出ていましたが、反応がほとんどない状態でした。内容はイベントと手続きの告知のみです。

各部署からの依頼を順に出す運用になっており、住民から見て読む理由のないアカウントになっていました。

やったことは3つです。

  1. 窓口を1つにして優先順位をつける:全部を出さず、対象と時期で選ぶ
  2. 生活の情報を4割入れる:ごみの分別、健診の受け方、施設の使い方
  3. 対象を明示する書き方に変える:子育て世帯へ、高齢の方へ

半年後、投稿あたりの反応は4.2倍になりました。とくに伸びたのは、ごみの分別と健診の案内です。困ったときに調べる情報だからだと考えています。

転入者からの窓口への問い合わせも減りました。SNSで確認できるようになったためです。

町村規模の自治体|担当者1人で回していた

職員数が限られ、SNSの担当が1名という状況でした。その方が異動になり、更新が3か月止まっていました。

再開にあたって、体制から作り直しています。

担当を2名にし、投稿を作る人と確認する人を分けました。あわせて、判断の基準を文書にしています。目的と対象、投稿の型、触れない話題。A4で3枚です。

素材は各部署から共有のフォルダに入れてもらう形にしました。担当者が取材に回る必要がなくなり、負担が大きく下がっています。

1年後、投稿は週3本で安定しています。担当の1名がさらに異動しましたが、文書があったため引き継ぎは2時間で済みました。

続く仕組みを作ることが、内容を良くすることより先だった例です。

solezoreのサービス一覧と料金

よくある質問

Q. 全住民に向けて発信すべきですか?

A. 1本の投稿で全員に届けようとしないでください。対象を明示すると、当てはまる人には届きます。投稿ごとに対象を変えれば、全体としては全住民をカバーできます。

Q. 告知ばかりになってしまうのですが、どうすればいいですか?

A. 生活に役立つ情報を4割ほど混ぜてください。ごみの分別、健診の受け方、施設の使い方。困ったときに調べられる情報が蓄積されると、日常的に見られるようになります。

Q. どの媒体を使えばいいですか?

A. 2媒体から始めてください。即時性の高い媒体と、蓄積される媒体を1つずつ。担当者の人数に対して媒体が多すぎると、どれも更新が滞ります。

Q. 災害時の運用はどう準備すればいいですか?

A. 平時のうちに、誰が何を出すか、どの頻度で出すかを決めておいてください。あわせて、平時の予約投稿を止める手順も必要です。災害の最中にイベントの告知が流れると批判を招きます。

Q. 炎上が心配な場合、どう備えればいいですか?

A. 投稿前に必ず1名が確認する手順にしてください。触れない話題も先に決めます。批判が集まった場合はその場で反論せず、事実確認をしたうえで組織として対応します。担当者個人に背負わせない体制が必要です。

Q. 担当者の異動で止まってしまうのを防ぐにはどうすればいいですか?

A. 判断の基準を文書にしてください。目的と対象、投稿の型、判断の基準、触れない話題。A4で3枚ほどです。あわせて担当を2名にすると、片方が不在でも動きます。

まとめ

自治体のSNSは、続く仕組みを作ることが先です。この記事の要点です。

  • 住民への告知、移住の促進、観光の誘致は別の施策。混ぜると届かない
  • 1本の投稿で全員に届けようとしない。対象を明示する
  • 告知6割、生活の情報4割。日常的に見られる状態を作る
  • 締切のある告知は3回に分けて出す。繰り返しに気づくのは担当者だけ
  • 災害時の運用は平時に決める。予約投稿を止める手順も含めて
  • 判断の基準を文書にする。異動で止まらない体制が最優先

補足すると、生活の情報を出し始めた自治体から共通して聞くのは、窓口への問い合わせが減ったという話です。同じ質問への回答を投稿として残しておくと、住民が自分で確認できます。情報を届ける施策が、職員の業務を軽くすることにもつながっています。

代行の費用や体制づくりについては、ピラー記事もあわせてご覧ください。

solezoreでは、発信の設計から投稿の型づくり、引き継ぎ資料の整備までを支援しています。体制づくりの段階からでも構いませんので、現状をお聞かせください。

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後藤駿幸(株式会社solezore 代表取締役)

この記事の監修者

後藤駿幸

株式会社solezore 代表取締役

株式会社solezore 代表取締役。30万人規模のTikTokアカウントを現役で運営しながら、企業のSNS運用代行・TikTokキャスティング・EC販売支援を行う。記事は、自社と支援先の運用で実際に起きたことをもとに書いている。

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